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【2024年04月20日17:04 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その9

真新しいブーツの紐を結ぶと気持ちがきりっとしたような気がした。
今日からは今までの素手に頼った戦い方ではなく、武器の能力をフルに生かしていかなければならない。
「よしっ」
レイラは自分の頬を叩き、気合をいれた。


かくありし時過ぎて、世の中にいとものはかなく


「へぇ」
「ふむ」
買い物に付き合っておらず、レイラが装備を揃えたことを知らなかった男たちはレイラが待ち合わせ場所である街外れに姿を見せたときに揃って声を上げた。
「いや、なにその微妙なリアクション~。もっとほら、こう、あるでしょ? かわいいね、とか。きれいだね、とか。ナイスだね、とか」
「寝癖がついてるね、とか?」
朝からテンションが高いレイラに後ろから遅れて姿を見せたファールが声をかける。
「うそっ!? ついてる」
「んにゃ、ついてない。おはよう」
やや眠そうに朝の挨拶をパーティメンバーと交わすファール。
「なにそれなにそれぇ。感じ悪ぅい」
ぶー、と唇を尖らせながらレイラがわめく。それを昨日のうちにおごってもらった真新しい緑のローブに身を包んだケイツが呟いた。
「……朝から血圧高いですね」
「……人を病気扱いしないでもらえるかな、ケイっちゃん」

鱗の生えた馬……のような蛇のような……微妙な生物、マウモリスクが炎のブレスを吐き出そうと息を吸い込む。
「にゃろっ!」
ブレスを吐かせてなるものか、とばかりにシガンがモーニングスターを叩きつける、がやや浅い。
ひるみはしたもののマウモリスクはブレスを吐き出した。

「うっげぇ、ちりちりするぜぇ~」
ぴりぴりとする火傷のあとを指で引っかきながらシガンは顔を歪める。
マウモリスクは一度のブレスを吐いたあとカザルの剣によって斬り伏せられていた。
「まぁ、しゃあないしゃあない。ほら、ブレスだってシガンが馬の体力削ったおかげで多少は弱まってた……はずだし」
レイラがフォローを入れるが歯切れが悪い。
ブレスを吐かせる前に倒してしまうのがやはりベターだからだ。
「司祭であるならば、まずは攻撃よりも防御を考えるべきである……倒すことなど前衛に任せておけばよい、っと……ほれ、鑑定を頼むぞ」
器用にワナをはずしたユーウェイがアイテムをほおり投げる。
「うわはぁ……う~ん」
よくわからない叫びを上げながらそれでもアイテムを受け取り、それに意識を集中する。
「……ハルバード、かな」
一見、長柄の槍。だがその横に斧状の刃が飛び出しその武器の殺傷力を上げている。
「う~ん、これなら……」
シガンは小さく呟いた。

「カザル、ユーウェイ、ちょっと時間いいかな? 相談があるんだ」
その日の探索を終え、地上に戻り思い思いのオフを楽しもうとするパーティメンバーにシガンが声をかけた。別にレイラ、ファール、ケイツがいてもよかったのだが、すでに彼女らは立ち去ったあとだったのだ。
「おう。んじゃあ酒場にでもいって悩める若人の話でも聞くかね……ユーウェイさんはどうします?」
カザルは軽く頷きながらユーウェイにも尋ねた……カザルはパーティ最年長者であるユーウェイに対しては敬語で話していた。
「うむ、それでかまわぬ」
「でも最近、ユーウェイさんって探索終わったあとどっかいっちゃってるじゃないですか? 女の子じゃないんですか?」
言外に待たせてもいいのか、と尋ねるシガン。
「女、であることは否定せんがな。まぁ、今日のところはよかろう」
否定しないのか……
シガンは少し驚いた顔で眉を寄せた。この黒人の巨漢と枕を共にする女の姿が想像できなかったからだ。

「で、なにを相談したいんだ?」
ウェイトレスにエールを注文し、カザルは自慢の金色のヒゲを手で撫でながらシガンに尋ねた。
「実は……」
「あぁ、ユーウェイさん!」
口を開きかけたシガンに被せるように後ろからユーウェイを呼ぶ男の声。ギルガメシュの酒場のウェイター、カルーである。
「ふむ……すまんが席を外すぞ」
ユーウェイはカルーの側に行き、なにかをぼそぼそと喋り始めた。深刻な話、ではないようだが……
「う~ん、まぁ、カザルだけにでも……実は俺、ロードになりたいんだ」
シガンはカザルに少し迷いながら打ち明ける。
「ぶっ」
「汚ー! 汚ー!」
エールが運ばれてくるまでの間、手持ち無沙汰にグラスに入ったガス入りの水を飲んでいたカザルはシガンの言葉に思い切り噴出した。対面に座っていたシガンは被害甚大である。
ロード……善戒律の冒険者であれば全員が憧れるであろう存在。戦士の腕力と僧侶呪文を使いこなすパーティの中核。ニンジャに並ぶ最高クラスの冒険者的存在、と言えるであろう。だがそれゆえに転職のために必要とされる能力は知恵や器用さなど多岐にわたり、またそれだけでなく運の強さのような目に見えないものすらものも必要なのだった。だが……
「能力は問題ないんだって……というか冒険続けてていつの間にか、俺もそれなりに育ってたみたい。ロードだったら体力だって今より高くなるし、今日のハルバードもそうだけど後列から攻撃できる武器だって豊富だろ」
シガンは眉間に皺を寄せながらカザルが噴出した水をハンカチでぬぐう。
「そうか……だが鑑定がなぁ」
「あぁ、そっかぁ」
カザルが難しい顔で呟く言葉にシガンも頭を抱える。
鑑定。これはビショップだけがそのアイテムの奥底に眠る『念』とでも呼べるものと同調することによって、その本質を探る技術であった。
未鑑定のアイテムはボルタックの店には引き取ってもらえないため、ビショップがいないパーティはボルタックで有料で鑑定してもらうしかない。その金額はなんと売値と同額なのであった。
しかしユーウェイがカルーとの話が終わったのであろう、近づいてきて言う。
「一応話はこちらにも聞き耳を立てていたので聞いていたのだがな。問題はない。シガンよ、転職するがよい」

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【2006年12月05日15:49 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
今回のタイトルは蜻蛉日記。そういえば木尾士目先生の陽炎日記ってマンガ、結構面白かったなぁ。

ソードワールドRPG ディディエ・ドログバ(ユーウェイ)
唯一の現行キャラ……なんだけどイメージが固まりすぎちゃってねぇ。
実在のサッカー選手を外見モデルにプレイしてるわけです。その外見写真は今回のURLにいれとくとして。
ちなみに元キャラはソーサラーです。知力4だけど。筋力19だけど。
【2006年12月05日 15:58】| URL | 上杉霧音 #990b6cb28c [ 編集 ]
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