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【2024年04月27日05:39 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その41

「あっれ? ドルツは?」
ハロゥが集合場所にいつまでたっても姿を現さない巨漢をいぶかしむように言った。
「なぁんか血相変えて宿から出て行ったぞ」
「へぇー」
だからどうろいうわけでもなくハロゥはクッキーをかじった。


このえん仏ぼうくだられ候う


「ふぁ、ふぁーるさんはぁっ!?」
血相を変えて神殿に飛び込んできたドルツに神官たちが迷惑そうな視線を送る。
当のファールはといえば寝台に横たわったままカザルと何事か話をしていたがドルツの姿を見て満面の笑みを浮かべながら右手を上げた。失われた左手も元通りになり、体力を失っていることを除けば完全復活といっても過言ではないだろう。
またシガンとミルーダも蘇生に成功しており、パーティはなんとか全員失われることなく帰還できていた。

ファールの犠牲によって奥の院からの脱出を果たした3人はダバルプス呪いの穴の5層から歩いての帰還を果たしていた。
もちろん奥の院脱出後もモンスターの襲撃を受けていたものの、奥の院に出現するモンスターとはやはりレベルが違う。奥の院を探索することが出来るパーティにとって、3人だけとはいえ、ダバルプス呪いの穴のもんスターたちは障害にはなりえず、闘争と戦闘を繰り返し……道中ケイツが毒を受けるトラブルもあったものの残り1個の特効薬を使用することによってなんとか耐え、ここリルガミンへ帰還していた。

「ふぁーるざん……よがっだぁ」
ファールの姿を見てへたり込むように座り込んだドルツにファールは苦笑を浮かべた。
「油断しちゃったって。心配かけてごめんねぇ」
「油断っつーか、あれは……なぁ」
ファールの言葉にぼやくカザル。ファールの機転で助かったことは事実とはいえ、犠牲が出てしまったことに不満が残る。
「ま、なんとか生き延びることが出来たし。しばらくは安静だろうけど、その間の探索はよろしくねー」
ファールのウィンクにドルツは安心したような顔で頷いた。

「やっぱ回復薬はもっと持って行くべきだな」
蘇生したばかりの3人を宿に押し込み、酒場に向かったカザル、レイラ、ケイツ。カザルが気難しそうな顔をして呟いた。
「本当だったら僧侶がほしいんだけどねぇ。まぁ、現状はエロガキのマディ2回、これを回していくしかないでしょうね」
肩をすくめながらエールをあおるレイラ。
「……誰かが僧侶に転職する手段もないわけじゃないですけど、それはそれで時間がかかっちゃいますし、そうなると現状のまま、薬を多めに持っていく、しかないんじゃないでしょうか」
溜め息をつくように呟くケイツ。
「どうであれ3人の回復を待つ間、恐らく3日程度は探索も中断だ。その間に準備だな」
パーティメンバーを変更するようなことになればまた連携面の建て直しを一から構築せねばならない。だからこそ、そのような方法は最初に除外されていた。
考えられる方法は今のメンバーのまま死なない方法……そのようなものがあるのだろうか。

「やぁ、昨日はドルツがそっちにいかなかかったかい?」
翌日……酒場でひじをつきながら考え事をしていたカザルにマリクが声をかけた。
「ん? あぁ、ドルツならきたぞ。そのままうちのファールの看病にはいったみてぇだがな」
「あぁ、やっぱり」
カザルの答えに苦笑するマリク。
「昨日はあいつが集合場所に来なかったからね。やっぱりそっちだったか」
「あぁー……まぁ、ドルツはファールにベタボレだからなぁ」
カザルも苦笑を返す。
「ってことは、サムライ1人失えば探索も昨日は中止か? ご苦労だったなぁ」
「まさか。あいつがいなくても『楽が出来ない』ってだけで探索自体は可能だからね」
マリクの言葉に意外そうに目を開くかザル。
「ほう、そりゃ余裕だな。まぁ、お前さんとこには僧侶がいるから楽かもなぁ」
「そうだね。やっぱり防御面では頼りになるよね……でも君のところにもロードとビショップがいるんだから条件はほぼ同じだろう?」
カザルは肩をすくめながら溜め息をつく。
「いや、やっぱり僧侶ほどの成長が見込めるわけじゃねぇからな。まだ使えない呪文も多いみたいだし」
「……そんなに使えない呪文が多いのかい? それはまいったね」
カザルの言葉にいかにも意外だというふうに目を見開くマリク。
「2、3レベル程度の呪文も唱えられないなんて、難儀な職業なんだねぇ、ロードというのは」
感心するように呟くマリク。
「へ? ……お前らそんなに軽傷すらおわないのか?」
そのマリクにやはり意外そうに問い返すカザル。
「……」
「……」
しばらく沈黙が落ちた。
「なにか話に食い違いがあるようだね?」
「あぁ、俺もそう思ってたところだ」
頷きあう2人。
「僕のいってる僧侶呪文というのはパーティの防御力を高める補助呪文なんだけど、そこまではいいかな?」
「そうなのか? 俺はてっきり回復呪文のことかと思ってたぜ」
なるほど、と頷くマリク。
「確かに戦闘中のケガを早く治すに越したことはないけど……でも戦闘後だったら悪魔の胸当てをつかえばいいじゃないか」
「なんだそりゃ?」
間抜けな声を出すカザル。
悪魔の胸当て。これを着用すると歩くだけで体力を消耗するというカースアイテムである。
もちろんこんなものはダバルプス呪いの穴にごろごろと転がっており、パーティにとっては『ただ売るだけのアイテム』であった。
しかし……
「知らないのかい? あの胸当てに秘められた魔力を開放すると体力を完全に回復させることが出来るんだよ?」
「うそ……?」
マリクの言葉にカザルは間抜けに口をあけた。

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【2007年01月07日11:48 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
タイトルは御消息拾遺。浄土真宗の仏教書です。

さて悪魔の胸当てとかですが、私はつい最近知ったよ、こんな効果! だからゲーム中では使ってません。
そら苦労するわけやでー。
【2007年01月07日 11:51】| | 上杉霧音 #92c9f3e550 [ 編集 ]
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