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【2017年12月13日20:12 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その8

「はぁい? どなたー?」
「あ・た・し」
ノックの音に反応しアドベンチャラーズイン、スイートルームのベッドの上で食べていたフライドポテトを咥えたままドアのほうを向いたファールはドアの向こうからの返答にげんなりした。
「帰れ」
「ひっどいこというなぁ」
けらけら笑いながらレイラが室内に入ってきた。


男もすなる、日記といふものを、女もしてみむとて、するなり


リルガミンの街中を歩く3人の女。
「あの……買い物に行くのはいいとして……なんで私もなんです?」
「たまにゃあ付き合いなってばさ~」
ケイトの当然といえば当然ともいえる疑問にけらけら笑いながらレイラが答えた。

レイラの言葉はそれなりに簡単なものだった。
「今の自分じゃニンジャの力を生かしきれてないからねぇ。だったら装備の力を借りたほうが戦力足りえるし……装備買いに行くから付き合ってちょ」
言葉は簡単でも今までニンジャとして素手で戦ってきた矜持を捨てるのは簡単ではなかっただろう。
レイラはそれを笑いながら2人に言っていた。

「でも……私……装備のこととかなにも知らないし……って聞いてないですね、ふぅ」
ファッションの話に興じるレイラとファールを横目にドワーフ少女は溜め息をついた。

「すねあて、肩当て……次は~、っと……あれなに? なまくらな剣? 呪われたブツをそのまま売っとくなぁっ!」
レイラはテンション高かった。
リルガミン市中に存在するボルタックの店。
リルガミンの武器取り扱い店として老舗であるこの店はダバルプスの時代からずっとこの街に存在しているという。
不確定アイテムの鑑定、迷宮内で発見したアイテムの買取、呪われたアイテムの解除など冒険者にとって必須の店ではあるものの売値は買値の半額。また鑑定も同様の値段を請求される……ボルタックの店では未鑑定のアイテムの買取は絶対に行われないため……という冒険者から『ボッタクリの店』などと呼ばれる、しかし冒険者にとって絶対に必要な店であった。
店主のボルタックは寡黙なドワーフの老人であり、一説にはトレボー時代からずっとあの店を経営しているとも言われていた。またいつ行っても変わらない対応や、そのあまりの愛想のなさからボルタック、という人物はこの世に存在せず、店番をしているのは精巧な自動人形なのではないか、と噂すらされるほどの人物であった。
「これなんかよくない?」
「胴鎧? う~ん、肩のとこ、かっこ悪くない?」
ファールにダメだしするレイラ。
「え? 超かっちょいいじゃん。私のほうが着たいくらいだってば」
「趣味悪っ!」
迷宮内では装飾よりも実用であることが重視される。
ただ同程度に実用であれば、華美なほうに目が動くのは当然といえよう。
後ろで2人が騒いでいるのをよそにケイツも商品を見回していた。
後列のマジックユーザーなだけに、それほど高価な装備は必要ない……とはいえ上を見ればきりはなく、また……
「……うぅ」
自分の薄汚れたローブと壁にかかった真新しい緑色のローブを見比べてへこむケイツ。
値札を見る……
ケイツは溜め息をついた。
「ケイっちゃん、なぁに溜め息ついてんのかなぁ~」
「きゃあっ」
後ろからいきなり抱きつかれケイツは悲鳴を上げた。
「ケイっちゃんって誰よ」
「ケイツちゃんの愛称。かわいいじゃん」
抱きついたレイラを見ながら不思議そうに問いかけるファール。
『かわいいかなぁ?』などと首をかしげている。
「んでー? なに見てたのなに見てたの? 緑のローブ? あ~、悪くないんじゃない。値段も……うん、それほど高いーッ! ってほどでもないんだしさ。ね? ね?」
やたらテンションが高いレイラ。
「……いや、そ、それはともかくっ。買い物は決まったんですかっ?」
「あ~、それがねぇ」
少し言い出しづらそうにファールを見るレイラ。
レイラは肩をすくめる。
「このワガママニンジャはあっこに飾られてる『アレ』がご所望だそうよ」
ケイツはファールが親指でさした『アレ』を見て絶句する。
ファイアーソード。
今、ボルタックの店に置かれている剣の中で間違いなく最高級品であろう。その値段はなんと10000ゴールド! アドベンチャラーズインのロイヤルスイートルームにも20日間も泊まれる金額! ……普段、馬小屋で寝起きしているケイツにはあまり関係ないが。
「ちょ……ケイっちゃん、大丈夫?」
「……いえ、あまりの金額に眩暈がしただけです」
それはあまり大丈夫ではないんではなかろうか。
「えっと、で、ただちょ~っと持ち合わせが足りなくて……ちょっと貸してくれないかなぁ?」
「……無理です」
すまなさそうに借金をお願いしてくるレイラに、これまたすまなそうにケイツが答えた。
「いや、ほら、パーティの装備が揃えばみんなの生き残る確率が上がるわけだし、それ考えるとファイアーソードって悪くはないと思うのよ」
雰囲気が悪くなることを嫌ったファールがフォローを入れる。
「……いえ、そうじゃなくて。私、冒険で儲けたお金って全部弟たちに送金してるんで……ほんとにお金がないんです」
ケイツは『ほら』と財布代わりの皮袋をあけてみせる。15ゴールドはいっていた。
「……ごめん」
「……気にしないでください」
ファールがフォローを入れようとした雰囲気はもっと悪くなってしまった。
「あー! よし、おじさんがその緑のローブおごっちゃる!」
レイラが叫ぶように言った。
「え? ……いや、悪いですよ」
ケイツが断ろうとするが相変わらず無視される。というか誰だ、おじさんって。
「ファール、金貸せぇ!」
「私かよ!」
ツッコミをいれながらファールが財布を開けた。
「でもファイアーソード分のお金は出さんからね」
「ぇー」

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【2006年12月04日15:39 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルは紀貫之の土佐日記。平安ネカマ日記ですね。

できるだけ日常観を出してみたんだけどどうでしょ?

三国志演技 『黄巾の担い手』東想(シガン)
邪教として弾圧されながらもがんばる太平道導師。いや、なにかしらマイナス要素がないと燃えんのよね、TRPGって。
カンペキキャラなんて演じるなんて考えただけで吐き気がします。
自分ももちろんカンペキ超人じゃないし、ウィークポイントを持ってる人間……それが立場的なことであれ、肉体的なことであれ、精神的なことであれ……に惹かれるわけですね。
【2006年12月04日 15:49】| | 上杉霧音 #936411a0c4 [ 編集 ]
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