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【2024年04月26日03:58 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その1

ガキーンッ!
硬質のものがぶつかり合ったとき特有の音とともに一種、ほの闇が火花によって照らされる。
片や不気味な仮面を身につけた異相の集団……ダンジョンに巣食う魔物、カナバル。
片やカタナを振るう10代後半の黒髪の女サムライ。その長い耳から種族はエルフであると知れる。
硬質の音はカナバルの手にする斧とエルフサムライのカタナが交差した音であった。
「あまり突っ走らないで、バル!」
女の後ろから、それに注意を促す別の女の声。その姿は闇に溶けており見えないが。
「私の名前はバルじゃなくてファールだぁーッ!」
バル……いや、ファールは絶叫にも似た声を上げながら、再びカナバルに斬りかかる。


月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也


リルガミン。
エセルナート大陸の西域に属する都市国家である。
精霊神ニルダの霊力を宿したニルダの杖の加護によって守られたこの国はかつてワードナ戦役や悪魔王マイルフィックの顕現、ダバルプスの反乱など幾多の危機も乗り越え、歴史を刻んでいた。
新たな騒乱は新しい女王アイラスが即位した1年前にはじまった。
即位の儀の最中にはじまった突然の天変地異。豪雨が続き王国湾岸部は津波に巻き込まれ、ニルダの加護のある市内であれば決して起こりえないはずの地震までもリルガミンを襲った。
そして一週間、それは続き……一週間後にはアイラスの姉、ソークスの姿が消えていた。
それからも天変地異は続き、人々がニルダの杖の加護が薄れてきたことを噂しあう中、今度はアイラス、ソークス姉妹に魔道を教授していた宮廷魔術師タイロッサムが突如、ダバルプスの迷宮に籠城し、魔物の召還を始めた。
これによりアイラスは世界より冒険者を募り、タイロッサムを反逆者として討伐する布告を出した。

「だからッ! 私の名前はファールだと何度言ったらッ!」
カナバルを何事もなく退けたファールは、戦闘中、自分のことをバルと呼んだ女性に食って掛かる。
「いやぁ、発音しづらいし……ファー……バール?」
にこにこと笑いながらファールをどうどう、と押しとどめる女性。赤毛を後ろで縛った20代前半の糸目の人間。その服装は迷宮の中には不釣合いなほどの薄着である。
だが、これこそが彼女本来のホンキの戦闘スタイルであった。
レイラ……本来であれば悪戒律のものにしかなれないはずのニンジャに、善戒律でありながらその職についている。もちろんニンジャであるということは彼女はもともと悪戒律であり、戒律が変更される『なにか』があったはずなのだが仲間たちがそれを詮索することはない。
「レイラよ、こちらへ参れ」
カナバルたちの死体の側にしゃがみこんでいた岩……いや、男が立ち上がった。
人間、ではある。
鼻の下にヒゲをはやした20代後半の黒人の大男である。その腕の太さは鍛え抜かれたファーナやレイラの太ももよりも一回り太い。
またその背もけして背が低くない2人が見上げるほどに大きい。節くれだったその指も男がそうとうに名のある戦士であると想像されるのだが……
「レイラよ、この箱に仕掛けられているワナをどう見る?」
「む、むぅ~……えっと……テレポーター?」
男がレイラの頭を叩いた。すごくいい音がした。
「い……ったぁ~い! じゃあなんなんですか、師匠!」
「うむ、これはな……」
男がひょいっと箱を片手で持ち上げ、そのまま近くの壁に投げつけた。
人間離れした膂力によって壁に衝突した箱は、そのまま無残にばらばらになる。その瞬間、カシャンという音がして石が飛び出すが、その方向には誰もいない。
「見てのとおり石礫だ」
ひょいっと肩をすくめる大男。
石礫。不用心に箱を開ける者に石をぶつける仕掛けではあるのだが、こうも身も蓋もなくばらばらにされてはどうしようもあるまい。
男の名前はユーウェイ。これでも腕利きの盗賊であり、盗賊の技術をレイラに教える先生でもある……『教官』と呼んだほうが似合いそうだが。
「……あ、あのっ。剣が落ちていますよっ」
なかなか進まない一行の話に業を煮やした小柄な茶髪の少女……10代半ばだろうが、その平均身長にも届かない。それもそのはずで少女の種族はドワーフである……が声を振り絞るが、振り絞っているだけで蚊が鳴くより小さい。
「……あのっ……聞いていませんね。うぅ……」
隅っこでいじけだす。
このドワーフ少女は名前をケイツ。高位の魔術師ではあるがいかんせん押しが弱い。
「お、剣が落ちてるぜぇ!」
今度は血圧の高そうな少年の声が響いた。
僧衣を羽織った10代後半の人間。黒いくせっ毛をそのままに嬉しそうにメイスに駆け寄る。
「……あっちゃぁ~、呪われてらぁ~!」
メイスを鑑定し、なぜか嬉しそうに叫んだ。やたらテンションが高い。名前をシガンという司祭である。
彼の神は沈思がお好みではないのだろうか。
「まぁ、呪いの品でもよかろう。ボルタックであれば引き取ってくれる」
「そうね。儲けとしちゃ悪くないし」
腕組みして頷くユーウェイにファールが同意する。
「……うぅ、私のほうが先に見つけたのに」
床にのの字を書くケイツ。かなり達筆なのの字である。
「じゃあ今日のところは帰ろうか。もう呪文も少ないし」
まとまらないパーティメンバーを少し離れていたところで見ていた男が声をかける。
長めの金髪を香油でオールバックに撫で付けた20代前半のノームの青年。
顔を覆うヒゲも明るい金色である。
パーティリーダーであり、歴戦の戦士のカザル。
「じゃあマロールを……あれ? ケイツは?」
きょろきょろするカザルを恨めしそうな目でケイツが睨みつけた。

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【2006年11月27日17:29 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
Wiz小説のはじまりですよ~。
一応PTメンバーまとめ~。前列からどぞー。

ファール ♀ 18歳 El-n-Sam
レイラ ♀ 21歳 Hu-g-Nin
カザル ♂ 24歳 Gn-n-Fig
ユーウェイ ♂ 29歳 Hu-n-Thi
ケイツ ♀ 15歳 Dw-n-Mag
シガン ♂ 17歳 Hu-g-Bis
【2006年11月27日 22:53】| | 上杉霧音 #9a7c4d7e8e [ 編集 ]
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