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【2017年11月23日03:07 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その40

奥の院第5層。
パーティはようやくここまで帰ってきていた。
すでにシガンとミルーダは力尽き、残るメンバーも体力の大部分を失っている。なにより2人を失ったことで回復魔法を唱えることの出来る人間がいなくなっていた。


さて、二条より西ざまに遣らせて行くに


第5層。
6人揃っていれば、それほど大きい問題もなく通過できる場所ではあるが今のバランスを欠いた状態であれば非常に危険な場所であった。
「傷薬はあるか?」
「んー、こっちは……特効薬が1個」
カザルの言葉に物憂げに答えるファール。
「こっちはゼロ」
「あ、私も特効薬が1個です」
レイラとケイツも答える。
「俺もゼロ、ってことで合計2個か……うーむ」
あごに手を当てて考え込むカザルに、ファールはケイツと目配せして特効薬を渡す。
「ほい」
「お、おい!?」
カザルは慌てたように目を白黒させた。
「いやぁ、もうある程度は死も覚悟してるからね。でも誰か1人が地上まで死体引きずってくれりゃ生き返られる可能性だって低くないわけで。だったら体力が一番高い戦士に任せとくのが当然だろ」
「そ、そうですよ。死ぬのは怖いけど、全滅しちゃうのはもっと嫌ですから。可能性で言えばカザルさんが生き残る可能性が高いですもん」
カザルは眉をしかめて考え込んでいたが、やがて肩をすくめる。
「ちっ、俺1人に面倒を押し付けやがって」
言いながら特効薬を1個、飲み干した。

そこからも激戦であった。
下級魔族、吸血鬼、闇に落ちた神官、火の巨人……
しかしこの連戦に4人は奇跡とも言えるほどのコンビネーションを発揮してなんとか切り抜けていた。
やがて、あとは通路を北上すれば奥の院からの脱出が出来る地点まで到達する。
だが……

「……ここまできてッ」
ファールが左手を布で縛る。
そのひじから先は失われ、石の床の上に落ちていた。
火の巨人の操る剣がとらえていたのはまさに急所であり、それを腕一本で済ませたのはまさに僥倖といえた。だが……
僧侶魔法であれば、また特効薬の効果があれば回復は可能であるものの……ファールはパーティに残り1個だけ残された特効薬をカザルから決して受け取ろうとしなかった。
「お前! 死にたいのかっ!」
「死にたくないっていってるでしょ! だから飲まないんだって!」
ようやく腕をきつく縛ることによって失血を止めたファールがカザルに叫び返す。
「私は特効薬をカザルに渡した時点でもうなにが起こっても覚悟は決まってる! そっちも受け取ったんなら覚悟決めてよ!」
ケイツも濃い疲労を表情に浮かべながら、それでもおろおろと仲裁しようとするが言葉が見つからないようだ。
「バージャル、ここはバルのいう通りだってば。リーダーなんだからワガママ言わずにあきらめたらぁ?」
レイラが見かねたように苦笑を浮かべながら仲裁する。
「俺はカザルだ」
「私はファールだ」
仲裁したが名前が間違えている。
「そっ、そんなのもういいじゃん! リーダーなんだから甘えんな!」
「くっそ、リーダーなんか引き受けるんじゃなかったぜ」
珍しく赤くなって言い返すレイラ。それを聞くカザルのぼやきに残り3人が薄く笑った。

「……で、ここにきて、なのかよ」
もうあと数十歩も進めば裂け目に飛び込むことが出来る。すぐ後ろに裂け目が見えているのだ。
そんな位置でパーティに襲い掛かったのは最悪の敵だった。
ブロンドの女の姿をし、しどけない姿で男を誘惑する、だが背中から黒い羽をはやした悪魔が4匹。闇に堕ちた騎士が2人。
そして……あまりにも醜すぎる顔のロード。闇に堕ちたために天から呪いを得たロードが立ちはだかっていた。
「どうすんの?」
間合いをじりじり詰めながらレイラがカザルに聞く。
「真ん中のロードさえいなきゃ退却ってのがベストなんだがな……今の状況じゃそれも難しいだろうよ。となりゃ戦うしかねぇ」
退路の導線。そのちょうど真ん中をロードに遮られており、このまま退却は難しいだろう。ロードを相手にすることの困難を承知していながら、吐き捨てるようにカザルが言う。
「……んじゃあ退却しようって」
前衛3人の中で一番体力を失っているために2人から少し後ろにポジションをとっていたファールが簡単に言った。
「だから……退路がねぇんだってば」
呆れたように後ろも見ずに言い返すカザルに、後ろから笑みを含んだ気配。
……ファールが、笑っている?
いぶかしそうなカザルにファールはさらっと言い切った。

「死体回収はお願いね」

ファールが2人の間をすり抜けてモンスターに向かって突進する。
そのファールの行動は神速といっても過言ではなかった。だがそれはロードの間合いである。突進するファールにロードは迷いもなく剣を繰り出す。
ぞぶっ。
肉を絶つ音。ロードにとってはこれで終わる……そのはずだった。
だが……
ファールは体に刃を食い込ませたまま、右手でムラマサを振るいロードの首を刎ねる。
「は、やく行、けってぇッ!」
すでに命の炎を消しながらも絶叫するファール。その体を横から奪うように引きずり、悪魔や騎士たちの追撃を振り払いながら、パーティは裂け目へと飛び込んだ。

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【2007年01月06日20:55 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルは今昔物語集。

さぁ、どんどん殺伐としてまいりました!
ですが帰還編はこれにて終了。
次回からまたまったり進行ですよー。
【2007年01月06日 20:56】| | 上杉霧音 #5d0aeeb74e [ 編集 ]
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