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【2017年07月23日19:37 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その4

「泉……?」
地下水でもあふれ出したものか、第5層北西部でパーティを待ち受けていたものは濃い水の香りであった。
「つまり……この泉の底に時計の仕掛けが落ちてるてことか」
やれやれ、と首を振るカザル。
悪戒律のマリクのことだ。このような場所、ということはわざと黙っていたのに違いない。
「じゃあ……ユーウェイ、頼めるか?」
「委細承知」
しかし彼が潜るほどのことはない。
「あぐぉッ!?」
ユーウェイは足を水溜りに浸した瞬間、呻き声を発してその場に倒れ、それと同時に泉から奇妙な海洋生物が飛び出してきたのだ。
「マリクめ、これも黙ってたことかよッ!」
カザルが舌打ちをしながら剣を振りかぶる。


やまと歌は人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける


泉から飛び出した海洋生物はメロウ……魔術師と僧侶の魔法を使いこなし、魔法無効化すら行ってくる強敵であり、しかもユーウェイがずっとマヒしたままではあったもののなんとかそれを退けたころにはパーティは満身創痍であった。
「ぬぅ、すまぬ」
戦闘の後半にようやくディアルコで麻痺から回復したユーウェイはその鉄拳を一度も振るうことなく戦闘は終了した。
「しゃあないって」
荒い息をつきながらそれでも微笑みつつファールが答える。
「バルの言うとおりですって。それよか師匠、仕事ですよん」
「バルじゃねぇー!」
ユーウェイはレイラとファールのいつもの言い争いを苦笑して眺めながらメロウの死体の片隅に落ちている宝箱にその繊細な指を這わせた。
「毒ガス、だな」
呟きながら鍵穴に針金を差込み、その内部を探る。
針金の先に目がついているかのようなその動きをパーティは固唾を呑んで見守り……
やがて……カチッというかすかな音。
「よし、あいたぞ」
ユーウェイは何事もないかのように宝箱を開ける。そこに時計が眠っていた。

第6層。
時計を手に入れたパーティは再びこの場所を訪れていた。もちろん箱を爆発させるため、である。
「うむぅ、この箱から伸ばしたワイヤーに時計のここを……こうして……よし、できた」
ユーウェイが持ち前の器用さで簡単な時限装置を作る。
「では仕掛けてくる」
シュタっと手を上げユーウェイが壁に爆弾を仕掛け、急ぎ戻ってくる。
そして爆発が……
爆発が……
ばく……
ば……

……しなかった。

「ぬぅあー! なぜ爆発せんのだぁーッ!」
はしゃぐユーウェイ。
微妙な表情で黙りこくるパーティ。これで道が開けると信じきっていたのだからその落胆もかなり大きい。
その微妙な空気の中、ケイツがはっと気づいたように顔を上げた。
「あ、あのっ! もしかして2つあった箱のうち、もうひとつじゃないと爆発しないんじゃ……」
「ぬぁーっ!」
しかしそのか細い声はユーウェイの図太い声にかき消された。
しゃがみこんで地面にのの字を量産するケイツ。
「あ、もっかしてもう1個の箱なのかな?」
しばらくしてレイラが不意に気づいたように顔を上げる……が、ケイツのと同じ内容だ。
「あぁ」
「そういえば」
しかしこっちはみんなが反応する。ケイツが泣きそうな目でメンバーを睨みつけた。
「よし、もう一度箱を取りにいってみよう。ケイツ、マロールをお願いできるか、って……なに不貞腐れてんだ?」
「……別に。なんでもないです」
カザルの言葉にケイツは口を尖らせてマロールの詠唱をはじめた。
「あ、まったまった!」
しかしファールの声がその詠唱を押しとどめる。
「もうお金払うのもバカみたいだしさ。箱のあった小部屋のほうに最初からテレポートすればお金払わなくてすむんじゃない?」
「おぉ!」
シガンが嬉しそうな顔をする。
確かに払わなくてもいい金を払うのは微妙だ。
「じゃあそれでいこう……頼めるか、ケイツ」
「……了解」
ケイツも肩をすくめてマロールの詠唱を再開する。

「ないじゃん!」
シガンのその叫びがパーティメンバー全員の心を代弁していた。
箱などなく、あるのは床に散らばったおがくずのみ。
つまりは……
「どう足掻いても5000ゴールド支払わにゃいかんか」
カザルが苦く呟いた。

「宝箱がほしいのかい? 今は2種類しかないよ。それでよければ5000ゴー……」
「うるせぇ、くらえー!」
箱売りの老人に5000ゴールドの詰まった布袋を投げつけるように渡し……というか実際投げつけているのだが、そして三度足を踏み入れた箱の部屋。
「……やっぱり2個ありますね」
「どっちだろう」
やはりあいも変わらず2つの箱が並んで置かれている。
「う~ん」
ユーウェイが箱の側にしゃがみこみ、しばらくいじっていたがお手上げ、というように手を振る。ユーウェイですらわからないのであれば他の誰にもわからないだろう。
確率は二分の一、であった。
もうお金を払うのはイヤだ!
せせこましくも切迫した感情が一行の目線を鋭くさせる。
そしてシガンが小さく呟く。
「2個とも持ってっちゃえばいいじゃん」
「あぁっ!?」

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【2006年11月30日20:47 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルは古今和歌集。

さてキャラ紹介第2弾ぱふぱふどんどんどん~。

GURPS妖魔夜行 伏谷飛遠美(ケイツ)
ま、手っ取り早いコンセプトは泣き虫バンシー。う~ん、びみょい。コンセプトからして若き日の過ちだなぁ。
でも結構気に入ってはいたのでこんな形で復活させてみますた。うぬうぬ。
【2006年11月30日 20:55】| | 上杉霧音 #9a7c4e8d15 [ 編集 ]
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