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【2024年04月25日22:06 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その10

転職の儀。
訓練所で行われるこの仕組みを知っている冒険者は決して多くない。
儀式自体はすぐに終わる。その職業の基礎知識を一瞬で冒険者に植えつけるための魔方陣の上に乗り、あとはしばらくじっとしていればよい。
その魔方陣は冒険者に精神的な負荷を強いることになるため、実際の年齢は変わらずとも冒険者として活動できる肉体年齢としては5、6年加齢されることになる。


祝へ大漁平戸の濱へ


そして今日、カザルたちのパーティからロードが誕生した。
「なんだよぅ、エロガキも成長してたんだねぇ」
「エロガキっていうなよぅ」
ファールのしみじみとした呟きに真新しい白銀の鎧に身を包んだシガンが抗議の声を上げる。
全員がギルガメシュの酒場に集い、祝杯をあげていた。
転職を行ったことによりシガンは知識や腕力など、すべての能力が大幅に減退していた……これもまた転職魔方陣の特性のひとつであった。
「で、なんかかわったんかー?」
カザルの質問に考え込むシガン。
「ん~、と……そうだなぁ。ディオスが使えそうな気がする」
「お前は元司祭なんだから当たりめぇだっつの」
他の誰がツッコミを入れるよりも早くカザルがツッコむ。
「んじゃあ……カティノも覚えてる」
「それも司祭の特性だ……というかロード関係ねぇ」
二度目のツッコミも早かった。
「ん~……あんまり実感ないんだよねぇ。ただ明らかに腕力は落ちたと思う」
手をぐーぱーぐーぱーと握りながら感触を確かめるようにシガンが言った。
「そうかそうか……まぁ、お前はしばらくは後列で徐々に慣らしていけ。とりあえずこの前拾ったハルバードを武器にしてりゃいい」
「う~い」
そのままカップのエールをちびちびとなめるように飲むシガン。
「……で、でもこれから鑑定が大変になりますよねっ?」
やはりテーブルに着いたままエールを飲んでいたケイツがカップから口を離して質問した……が、誰も聞いていない。
「はぅぅぅ」
泣きながらのの字を酒場の床に量産し……
「うわぁ」
「ぐあっ」
忙しそうに注文を他のテーブルにとりにいこうとしていたウェイターのひざに側頭部を直撃され悶絶するはめになった。
「なぁに遊んでの、もう~」
「……い、いえ、あ、遊んでるわけでは……決して……」
パーティメンバーたちが呆然とその状況を見守る中、ケイツはしばらくひくひくと死にかけのゴキブリのように蠢いていたがファールに手を借りながらふらふらと立ち上がり、目をしばたかせた。かなりグロッキー状態である。
案の定、テーブルについてからも前後に揺れている。その様子は風になびく夏草に似ていた。それほど爽やかなもんでもないが。
「……えっと……あれだ。舌とか噛まなくてよかった」
シガンが小さな幸せ探しをするが、ここでそれをする意味がわからない。
「……で、シガンが転職しちゃってさ。これから鑑定とかどうなるわけ?」
やはりお金は重要である……が、それは先ほどケイツも聞いていた。
「あぁ、それに関しちゃユーウェイさんがあてがあるらしい」
カザルが腕組みをしたまま微動だにしないユーウェイを見て言った。
「む? ……うむ」
自分の話題になったためユーウェイは一瞬薄目を開けるが問いに答えるとすぐにまた目を閉じた。
「いや、うむ、だけじゃなくて。あてっていってもどういうことなんです?」
歯切れの悪いユーウェイにいらいらしたようにレイラはその大きい肩を揺する。
「お、おぉっ!? ね、寝てないぞ」
……やけに静かだと思ったら寝てたのか。
「それで、なんなのだ?」
普通に問い返すユーウェイにレイラが呆れたような顔をし、再び問いを繰り返す。
「鑑定のあてって聞きましたけど、どういうことなんですー?」
「おぉ、その話題か」
納得したようにユーウェイは頷いた。
「うむ、最近のことだが我輩、訓練所に行く用事があってな。そこでいまだ訓練生ではあるもののなかなかスジのいい司祭候補の娘と知り合いになったのだ。あの娘も早ければ今日か明日にでも訓練所を卒業できるということでな」
一度言葉を切りエールを一口。
「まぁ、最初からはじめるということで序盤はあの娘も大変かもしれんが、それであればシガンも同様の条件であろう。我輩はその娘をスカウトすればよいと思っておる」
「なるほど、って……ダンジョンに一緒に潜れる最適人数は6人ですよ、師匠。ここには……1、2、3……」
レイラは人数を数えかけて、その指をゆらゆらと揺れるケイツのところで止めた。
「……戦力外通告?」
酷いことを言う。
「いや、我輩、冒険者を引退するし」
「なるほどぉ」
さらっと答えるユーウェイにさらっと頷くレイラ。
「……」
一瞬テーブルが静まり返り……
「ゆ、ユーウェイさん、どういうことですかーッ!?」
と、食って掛かるカザル。
「し、師匠っ!?」
と、目を白黒させるレイラ。
「そんな大事なことさらっというなー!」
と、わめくシガン。
「え? なに? ……どっきり?」
と、きょろきょろと辺りを見回すファール。
ケイツはいまだふわふわしていた。

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【2006年12月06日23:29 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
今回のタイトルは近松門左衛門、國性爺合戰。

ユーウェイさん抜けるとかいってますよ。あらやだ。
さて今回は悪PTのほうを……

トーキョーNOVA 小野正洋(マリク)
ペルソナがイヌなカブトエグゼク。
いや、あれだ。大捜査線のギバちゃんっぽくなりました。つまり結構気に入ってるってことっすね。
【2006年12月06日 23:35】| | 上杉霧音 #92c9f3e454 [ 編集 ]
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