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【2017年12月13日20:10 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その7

う~ん、まだもうちょっと……眠いんだけど……
ささやき。
ふにゃ……むぅ……
詠唱。
む~ん、あとちょっと。あとちょっとでいいから……
祈り。
あ~……わかったわよ……起きる。起きるってば……
念じろ!


雨晴れて月おぼろにかすむ夜


パーティのメンバーには1人足りない。
5人が瀟洒な扉の向こうを気にしながら沈痛に沈んでいた。
カザルは木の粗末なベンチに腰掛け、頭を抱えながら……
ファールは腕組みをして壁にもたれかかりながら……
ユーウェイはあごに手を当て、なにかを考えながら……
シガンはベンチの背に思い切りもたれ、放心したような表情を浮かべながら……
ケイツはうつむいたまま微動だにもせず、祈りの言葉だけを小声で呟きながら……
……ただファールの蘇生だけを念じていた。

リルガミンにおいて死は絶対のものではない。
老衰や病死であるならともかく、外傷によって仆れたのであれば僧侶魔法のディやカドルト、そしてカント寺院が行う蘇生術……といっても街中の清潔な場所で万端の準備をもって行うというだけで、やっていることはディ、カドルトとかわらないのだが……によって復活する可能性がある。
万が一蘇生呪文によって注ぎ込まれるエネルギーに肉体が耐え切れなかった場合は、その肉体は灰と化してしまう。
だがここからもさらにもう一度復活を試みることが出来、それでもなおかつ蘇生に失敗したものが完全な死……消滅を迎えることになるのである。
当然ダンジョン内部でディ、カドルトを行うよりも、例えばアドベンチャラーズインのロイヤルスイートで万全の準備ののちに蘇生魔法を唱えることができればカント寺院で行うのと同じ程度の確率での蘇生成功が望めるであろう。
しかしリルガミン市内での呪文の使用は禁じられており、だからこそ街中で呪文の行使が厳しく罰せられるのはカント寺院の利権を守るためである、とは口の悪い冒険者の弁であり、多分に真理であった。

トモエの剣に仆れたレイラは一度、カントの蘇生術に失敗し、今、灰からの蘇生術が施されている最中であった。
後悔の言葉を吐くものはいない。
レイラの死は全員の責任ともいえるべきものであり、後悔だけに溺れるようであれば今後、自分自身が迷宮で生き残ることすらおぼつかないからだ。
やがて……
施術室の分厚い扉が開かれ、冒険者たちが一斉にそちらに注目する。
そこには術を施したであろう中年の神官と、それが押す車輪つきの簡易寝台に寝かされたレイラの姿があった。
「……やぁ、しくっちゃったねぇ」
レイラは薄く目を開け、メンバーに向けて弱々しく微笑む。
蘇生したばかりであり、その命の炎は今にも消えそうであった。
だが、蘇生には、成功した。

体力を消耗したレイラをアドベンチャラーズインに放り込み、ケイツはギルガメシュの酒場を訪れていた。
お目当ての人物は……いた。
奥のテーブルでちびちびとエールを飲んでいるさえない中年の男、ゼムン。
ケイツがテーブルに歩を進めるとゼムンも近づくケイツに気づき顔を上げる。
「……あぁ、蘇生は成功しましたか」
ケイツの顔だけ見て、ゼムンは何事もなかったかのように再びエールに視線を落とす。
「成功したもなにも、私たちはレイラが死んだことを言っていない。なぜ貴方はそれを知っているの……そして迷宮で彼女に言った言葉……」
右からの斬撃に気をつけてください。嫌なビジョンが見えるので。
「……あれはどういうこと?」
詰問するケイツの口調にゼムンは苦笑する。
「私がなにかしたとでも?」
「そうは言ってない。ただどういうことか知りたいだけ」
肩をすくめて『なるほど』と呟くゼムン。
「種明かしすることはなにもないのですがね……私には子供のころから未来が見えたんです。レイラさんの右肩から刃が突き抜けるビジョンが見えた……ただそれだけですよ」
「……そんな」
眉をひそめるケイツ。
「信じていただけなくても結構ですよ。子供のころはずいぶんそれで周りの連中に鬼魅悪がられたものです……今となってはうまく制御もできていますがね」
苦笑交じりに呟くゼムン。
「……だったら、どうしてあのときもっと強く引きとめてくれなかったの!」
珍しいケイツの大声に酒場の他の連中が好奇の顔を向ける。
「種明かしをしたあなたですら今、半信半疑だった……迷宮に慣れきったと慢心したあの時点のあなた方に私の言葉が聞き入れられたとでも?」
「……ッ!」
ケイツは唇をかみ締める。
レイラが死んだのは誰か他の人間の責任、と罪を擦り付けたかった。
だがルビーのスリッパをその手に持ちながら、それを使うタイミングを見誤ったのは彼女自身だ。
カザルの指示ではない。彼女自身の意思で脱出を図るべきだったのだ。
「だ……」
「だいっきらい、ですか」
口を開きかけたケイツはゼムンの先回りの言葉に口を閉ざされる。
苦笑しながらゼムンは飲み終えたエールのジョッキをテーブルにおいて立ち上がった。
「……だったら強くおなりなさい、お嬢さん。誰よりも、です」

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【2006年12月03日20:55 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルは雨月物語。上田秋成ですね。

しっかしゼムンかっちょいいな、おい。

クトゥルーの呼び声 片桐浩(カザル)
これはあんまり原型がなかったりします。
かっちょいいんだけど、なんか微妙にずれてる人、ってコンセプトだけかな? あ、あと片桐は大学の料理研究会に入ってたんでカザルも料理は上手な予定です。
【2006年12月03日 21:00】| | 上杉霧音 #986e10b7cc [ 編集 ]
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