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【2024年03月29日13:46 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その33

目の前に小人……背に蝶に似た羽を生やした掌ほどの大きさの生き物、フェアリー族なのであろうが闇に落ちた存在、エルマナヤンが震えていた。
「ふふふ、もう逃げられんからねー」
ファールの言葉に首を横に振って退路を探そうとするエルマナヤン。
「これから拷問して、この迷宮のダンジョンマスターを聞きだしまーす!」
「ごっ、拷問……?」
ファールの宣言になぜかケイツが怯えたような声を出した。


らくの貞室、須磨のうらの月見にゆきて


目の前にぐったりとしたエルマナヤン。ヒモで体の自由を奪ったうえでファールがとった行動は……
「へっ……へっ……へっくち」
「ふふふ、今、そうとう恥ずかしい顔してるよぉ」
紙でこよりを作って鼻をこちょこちょとしていた。
「これは酷いな」
「……拷問じゃないけどな」
感想を言うシガンとカザル。
荒い息をつくエルマナヤンとなぜか嬉しそうなファール。
「ふえぇ……ふえぇ……」
泣きそうな顔でやたらとエルマナヤンに共感しているケイツ。しかし誰も気にしていない。くしゃみを出しそうな顔になって鼻を押さえている。
「これがお姉さま流の拷問ですか」
「……ん?」
ミルーダの呟きにレイラが顔を向けた。
「バル~。なんか妹さんがもっとちゃんと拷問しろってー」
「なっ!? 言ってません!」
ミルーダが反論しようとするがもう遅い。
「んじゃあアイテムその2を用意しよう。あと私はファールだ」
嬉しそうに道具袋の中をごそごそと漁り……
「じゃんっ♪」
ネコジャラシを取り出した。
「なんであんなもん持ってきてんだ」
「すごい準備がいいなぁ」
シガンとカザルが感心したように呟く。
「今度はこれで背中を……ふふふ」
ファールの笑いに怯えた顔をするエルマナヤン。
「方向性は変わらないんですね……ちょっと安心しました」
安心したといいながら呆れたようなミルーダ。
「う、やべぇ……ちょっと変な気分になっちまった」
エルマナヤンの怯える顔に股間を抑えながら前かがみになるシガン。
「うるっせぇ」
その後頭部にかかとを叩きつけ、黙らせるレイラ。
「う~ん、でもくすぐりって結構耐えられないんですよね」
「確かにその通り。耐えるのはかなり難しいね」
ケイツの呟きに答える男の声。
「そうなんですよね。私も……って誰ぇっ!?」
ケイツの大声に振り向き、臨戦態勢になるパーティメンバー。ケイツの言葉に頷いたのはローブを纏ったドクロだった。
「あ……あ……言ってません。まだ言ってませんでした!」
ファールの左手の中で青い顔をして叫ぶエルマナヤン。ファールはそれを不思議そうな顔で見ながら、しかし片手で腰のムラマサを抜く。
「でも言いそうだったじゃないかい。危ない危ない……そんな簡単に秘密を漏らしそうになる子はお仕置きだ」
ドクロが言いながらエルマナヤンを指さす。
「あっ! つっ!?」
ファールの手が燃えた。いや、ファールの左手の中のエルマナヤンが炎を発したのだ。
思わず手をエルマナヤンから離すファール。その手は重度の火傷を負い、そして手から離れたエルマナヤンはすでに絶命していた。
「てめぇ!」
先手必勝とばかりに斬りかかるカザル。しかし……
「あぁ、怖い怖い」
その斬撃はドクロの元には届かない。余裕を持って斬撃を避け、せせら笑うドクロ。
「ライカーガス」
ケイツが小さな声で呟いた。
「知ってるのか?」
「昔、師匠の書物でその名前を見たことがあります。バンパイアロードに並ぶ不死の王、と」
剣を避けられたことで、ドクロの追撃を嫌い元の位置に戻りながら問い返すカザルに、ケイツはやはり小さな声で答える。
バンパイアロード。
ワードナの迷宮で、常にワードナの側にあったという美貌の不死王。不死者の都ファールヴァルトの最後の王。その魔力はかつて1000年以上前の『最初の危機』においてエルフやドワーフの王族たちが悪魔王マイルフィックを倒す際に力を借りたほどだという。
それに並ぶ不死の王とは……
「なるほど、博識なお嬢さんだ」
ケイツの言葉に満足するように恭しく一礼して見せるライカーガス。
「ただ私と彼の者を同列に並べることはないよ。あのものはまごうことなき不死の王。私も元は人間で、今はこのような姿になっているものの不死者ではない。私は……そう、わかりやすく言えば人間として生まれ悪魔になったものと考えてくれればそれでかまわない」
「……人間として生まれた悪魔、だと?」
呆然と問い返すカザル。
「そうとも。人間として限界を超えるほどの魔力を有していればそれも可能なのだよ」
メンバーの脳裏にダバルプスの話が浮かぶ。あれも確かあまりにも強すぎた魔力を持つ人間だった。
「ということはお前らを召還したやつは悪魔になろうとしてるのか?」
「彼女には彼女の理想があるさ。今のところ悪魔になろうと考えてはいないようだけどね……まったく惜しいことさ、あれだけの魔力ならかなり高位の悪魔になれるものを……まぁ、話はここまでにしよう。私たちは第1層で待っている。早く来ることだね」
ライカーガスはそれだけ言い終え……恐らくなんらかの呪文を行使したのだろう、宙に掻き消えた。
「やっぱ彼女ってなぁ……『彼女』なのかぁ」
カザルが額を押さえ嘆息する。

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【2006年12月30日00:44 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
今回のタイトルは鹿島詣。

善のほうの拷問です。拷問?
【2006年12月30日 00:45】| | 上杉霧音 #986e10e5e9 [ 編集 ]
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