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【2017年12月13日20:10 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その34

「……ふぅん」
「あ、あの……お姉さま」
薄暗い部屋の中でだらしなくひじをつきながら本のページをめくるファールにミルーダが珍しく狼狽した声を上げる。
「なぁに? 言いたいことがあるんだったらとっとと言いな!」
少し強い口調でミルーダをたしなめるファール。
周りにいた僧侶たちがファールを一斉に睨みつけた。
「……蔵書室では静かにしてください」


白川のわたり、中山の麓に


蔵書室のある神殿から退出し、ファールはこきこきと首の骨を鳴らした。
「やっぱ神殿なんて死んだり呪われたりしない限りくるとこじゃないねー」
神殿からまだそう離れてもいないのに大声で言う。神殿の門に立っていた神官戦士が睨みつけるが気にしていない。ミルーダはそっちのほうにぺこぺこと頭を下げるが、姉をたしなめることはしなかった……もう諦めているから。
「でも珍しいですね、お姉さまのほうから神殿へのお誘いを受けるなんて」
姉妹の実家は精霊神ニルダを祀る修道院の長の家系であり、本当であれば神殿に立ち入ったとしてもおかしくはない。
だがファールは父親を激怒させた上、家を捨て歌の道に入ったため滅多なことでは神殿に立ち入ろうとはしなかった。
「ま、調べたいことがあったからね。ここらへんで王宮の資料室以外では一番蔵書が充実してるのは神殿だろうし」
「なるほど」
ファールの言葉に頷くミルーダ。
「調べ物は見つかりました?」
「それなりにね。リュクルゴスっておっさんのこととか」

「リュクルゴス? なんだそりゃ?」
奥の院に向かう回廊でカザルは間抜けな声を出してファールを振り向いた。
「ほら。昨日のライカーガスってやつ、人間として生まれて限界を超えたから悪魔になったとかなんとか言ってたじゃん? それだけ強大な魔力を持ってた人間だったらどっかにそういう記録って残ってないかな、って調べてみたんよ」
いかにも肩がこったといわんばかりに腕をぐるぐる回すファール。
「その生前ってのがリュクルゴスっていう名前なのか?」
「……なるほど。リュクルゴスでしたか」
初耳といわんばかりのカザルと理解した風なケイツ。
「知ってんのか、ケイツ?」
「そんな詳しいわけじゃないですけど……古代の法学者で古代帝国の法制定をした、って伝説が残ってます。貧富の格差の解消や軍整備などその功績は計り知れません。哲学者としても著名な人物でしたからもしかしたら叡智を求めるあまり定命の人間ではなく悪魔となったのかもしれませんね」
ケイツの解説にふぅん、と曖昧な表情で頷くパーティメンバーたち。
そんな古代人の妄執に巻き込まれても困ってしまう。
「ま、どっちにしろ迷惑なおっさんってことだね」
ファールが適当に話をまとめた。

カザルが玄室のドアを蹴破ると中のモンスターたちが臨戦態勢をとった。
槍を構えるその姿にミルーダが一瞬手を止める。
「……な!?」
2人の……背の羽の色こそ漆黒ではあるものの、流れるほどの金髪と美しい顔立ち。その姿こそ宗教画に描かれる『天使』そのものだったからだ。
しかしそんな躊躇も天使たちが目を開けた瞬間に消し飛んだ。その瞳の色は真紅。
人間が迷宮の闇にとらわれ、モンスターとなってしまうように天使たちも闇にとらわれ堕天し、悪魔となってしまうことがあるという。それが目の前にいる存在であった。
玄室に入ると同時にファールとレイラが息のあった攻撃を見せ1人の堕天使を屠る。
カザルもすぐさま残る1人に一太刀を浴びせ、あとはシガンが攻撃をすればいいだけであった……
ミルーダが躊躇したのはほんの一瞬。しかしシガンはそのミルーダに気をとられる。戦闘において一瞬とは恒久の長さにも等しいのだ。
カザルに斬られた堕天使はシガンに襲われる前に呪文の旋律を唱える。
「ぐ、がッ!?」
シガンは堕天使が唱えたなんらかの魔法により石畳に突っ伏した。
「あ、ラバディ!? ……くっ!」
対象の生命力の大部分を吸い取る魔法が効果を発揮するのを目の当たりにしたケイツが危険を判断し、急ぎ魔力障壁を張る。
シガンはあまりの深手に動くことが出来ず……またその光景を見てミルーダも動けずにいた。
「んなぁー! もうっ!」
鋭い顔をしたファールが残る堕天使の首を刎ねるまで、その戦闘は続いた。

「たっからばこ~♪」
さっそく堕天使の残した宝箱に取り掛かるレイラ。シガンも自分の回復魔法によって体力を回復している。
ただ、ミルーダだけが立ち直れずにいた。
「……あ?」
へたり込んだミルーダの前に立ったファールが有無を言わせずミルーダの頬を張った。
「おい、なにすんだよ!」
ミルーダをかばうように前に出るシガン。しかしファールはそれにかまわずミルーダの胸倉をつかみ強引に立たせる。
「他の誰もあんたのことを叱らないから私が叱る。あんたがぼやっとシガンは死にかけたんだ。あんたもパーティの一員であることを忘れるな」
ファールのあまりの静かな言葉、そしてあまりの激しい言葉にシガンすら言葉をなくす。
「まぁまぁ、反省してるみたいだしそこらへんにしときなーって、これ鑑定よろしく~」
箱の罠を無事解除したレイラがミルーダに長柄の武器を放りミルーダはしょげ返った表情で、それでも無意識にそれを受け取る。
「ん、あ……ガングニールスピアー、ですね」
「お? なんかかっくいい名前だな! んじゃ俺が使うわ」
重い雰囲気を払拭させるように明るく振舞うシガン。しかしミルーダは姉の視線を受け止めきれないでいた。

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【2006年12月31日03:45 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルは海道記。

さてミルーダ怒られました。
まぁ、怒られた理由としては明白なわけですがなぜそんな怒られなあかんのか。31話のクモのバケモノにファールが糸で絡まったのは許されるのか、って話をひとつ。
この2つは本質が全然違うと考えています。
自分がダメージをおっても仲間がフォローしてくれるのであれば素直に下がること。それができているので31話のファールと今回のミルーダはまったく違うと言うわけですね。
仲間が倒しても、自分が倒しても戦闘終了であることは一緒。だったら状況に任せましょとかそういう話でした。
【2006年12月31日 03:50】| | 上杉霧音 #9a7c4e8c7f [ 編集 ]
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