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【2017年12月13日20:12 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その25

「うひゃ~あ~、よく斬れるねぇ、これ」
翼を持った悪魔たちは数瞬後、すべて斬り伏せられていた。
まさに熱したナイフをバターに当てるかのようにファールの一撃は悪魔たちを屠る。
「……さすがムラマサですよね」
戦闘中はなにもすることがなかったミルーダが悪魔の放った呪文による治療の魔法を唱えながら感心したように呟く。
「あ、そうそう。ムラマサムラマサ」
ファールは今、名前を思い出したように頷いた。
「お前……いくら道具に執着しないっつっても程があるぞ」
シガンが呆れた。


子どもあつまりて、おあん様、むかし物がたりなされませといへば


「やぁ、待たせたかい」
「いや、それほどでもねぇ」
ギルガメシュの酒場。
『奥の院』の存在を確認したカザルはいったんの帰還を宣言し、リルガミンに戻っていた。
そして今、酒場で彼と待ち合わせをしていたのだった。
……青鎧の戦士マリク。
悪戒律のパーティを率いる金髪の伊達男は優雅にカザルの前に座る。
「まずはタイロッサム打倒おめでとう」
右手を軽く上げて祝福してみせる。その仕草に悔しさはまったくない。
タイロッサム打倒よりも、迷宮がもたらす財貨を重んじる彼らしい態度といえた。
「賢者からの話は聞いたよ。僕たちもその迷宮に進むことにしようじゃないか」
にっこりと笑うマリク。
「儲かる保証はねぇんだぜ?」
「僕たちは冒険者だ。必要なのは保証じゃなくて可能性だろう?」
マリクの言葉にカザルは大声で笑った。
マリクはエールを注文し、しばらく黙りこくる。テーブルに沈黙が訪れた。
「あぁ……うん……我らがトレボーの姫君は元気かい?」
言いづらそうにカザルに尋ねるマリク。
トレボーの姫君……レイラ。
もともとレイラは悪戒律のニンジャであり、マリクのパーティメンバー……そして彼の恋人だった。
「あぁ、元気だぜ。別れたっつっても会ってやってもいいんじゃねぇか?」
カザルの言葉にマリクは肩をすくめる。

それはまだ彼らが恋人であったころのこと。
今となっては昔のこと。

「よし、そろそろいこうか」
マリクはメンバーが揃ったのを見計らって探索の開始を宣言した。
自分が先頭。
恋人のレイラがその右後ろ。サムライの醜男ドルツが左後ろを固める。
後衛には司祭のラグラノール、魔術師のディーナ……
そして最後尾に僧侶のカイリがいた。
カイリ……種族は人間。年齢は20代後半であろう。
美人ではない。醜いわけでもない。ただの女。
彼女がマリクに好意を寄せていることは彼自身なんとなく感じてはいたが、彼にとってそのとき誰よりも大事だったのはレイラだったし、愛想のない年増女などにまったく興味がもてなかった。
ただのパーティメンバー。それはまったくの無感情。
後ろを振り返るとカイリがレイラを睨みつけていた。

第4層。いたるところに存在するダークゾーンとテレポーターが冒険者の足を阻む地。
探索を続ける彼らに室内で待ち構えて、襲い掛かってきたのは闇に落ちた処刑執行人たちだった。
「ちっ! ……数が多いな!」
3人の処刑執行人と5匹の暗い影。人数だけでいえばパーティを上回っていた。
レイラとドルツが前進する。マリクも暗い影を足止めするために前進した。
「グールか!」
暗い影の正体を見極めマリクは叫ぶ。グール……油断しなければそう怖い相手ではない。油断さえしなければ……
2匹のグールを瞬く間に斬り伏せ、調子付くマリクの背に3匹目のグールが……ただ、触れた。
「ぐっ……がっ!」
マリクの体が硬直する。麻痺……腐敗した体を持つグールの最も恐ろしい武器がそれであった。
マリクの動きが封じられたと見た1人の処刑執行人が大剣を振りかぶって襲い掛かる。
レイラは残り2人の処刑執行人たちに足止めされ動けず、ドルツは必死でフォローに入ろうとするが……間に合いそうにない。
……あぁ、ここで終わりか。
マリクは、ただ、そう思った。
しかし次の瞬間倒れたのはマリクではなく、マリクと処刑執行人の間に割り込んだ人影……カイリ。
血まみれのカイリは満足そうに微笑み、最後にマリクに抱きついてから、そのまま崩れ落ちた。
ドルツが処刑執行人にカタナを叩きつけるが彼女はもう……
マリクは麻痺した体で彼女の最後の笑みだけを思い出していた。

カイリはカント寺院の力をもってしてもこの世に戻ってくることが出来ず、この世から完全に消滅した。
その日からマリクはレイラを抱くことが出来なくなる。抱こうとすると頭に浮かぶあの顔……
そしてマリクはレイラと別れた。
最期の彼女のあの顔は……
最期の彼女のあの顔は……
最期の彼女のあの顔は……
マリクが最も愛していたのはレイラ、それは間違いない。だが彼の心に最も焼きついた顔は、あの死に臨もうとする笑顔だった。
彼女は最期の行動によってマリクを縛り付ける。
それはまさしく『呪い』だった。

ギルガメシュの酒場。目の前にはカザル。
「まぁ、いろいろあるんだよ」
あの血まみれの微笑を頭から追い出すように、マリクは苦笑してエールをあおった。

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【2006年12月21日21:12 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
コメント
無題
今回のタイトルはおあむ物語。

えっと、今、べろんべろんに酔って帰ってきて、ストックUPしたけど、コメントとかなに書いていいのかわからんのでもうへろへろはふんですー。
【2006年12月21日 21:14】| | 上杉霧音 #99bd587510 [ 編集 ]
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