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【2024年04月20日21:15 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その18

静かにその場に立ち……それだけでフィールドを支配するトモエにパーティは緊張する。
「あ、はは……」
レイラが笑い声のような声を漏らすが、これは彼女の性格……自分の弱いところを他人には見せたくない。どんな状況であっても余裕ぶっていたい、という思い……ゆえであろう。
その証拠にレイラの顔は引きつり、誰が見ても笑いを浮かべることに成功した、とは言いがたい。
緊張が汗となり……あごを伝って床に落ちる。


はかなくて年もかへりて


そして緊張のときはいきなり、何事もなかったかのように終わりを告げる。
「……ふぅ」
トモエの気が小さくなった。
「剣を収めよ。今は戦うつもりはない」
トモエの言葉にきょとんとする一行。
「……ぬ、聞こえなんだか……いや、もしや妾の発音が悪いのであろうか」
剣を収める様子のないパーティに困惑したようにトモエがぶつぶつと呟く。
「い、いや、聞こえている」
カザルが慌てたように答えた。しかしまだ剣は収めない。当然だが。
「なんじゃ聞こえておるのではないか……まったく。であればなんらかの反応をすればよいものを」
グチのように呟くトモエにメンバーたちは顔を見合わせた。
「あ、あの……変わったお知り合いですね?」
そのころはまだパーティに入っていなかったため初対面のミルーダがいう。
「知り合いっつーか……ねぇ?」
「んー」
ファールがレイラを見たが、レイラは腕組みして何事かを考えていた。
「……ワナ? まさか、このような意味不明なワナなどありえん……いや、むしろだからこそ、か……」
ぶつぶつと呟くカザル。このあたりは戦術家たるゆえんであろうが、だからこそ逆にトモエの考えを読みきることは出来なかった。
「あ、あのっ……武器しまってみませんか、とりあえず……?」
ケイツが提案してみるがいつものように誰も聞いていない。
「はぅぅ……」
こんな状況ではあるが戦闘中にはかわりなく、のの字を書くことも出来ず、ケイツは心で血涙を流した。
そして……
「ねーちゃん、戦わないってことは俺に惚れちゃった?」
シガンがとことこと無造作にトモエに近づき目をきらきら輝かせながらそうふざけた発言をした。
さすがのトモエもこういう反応をされるとは思わなかったのだろう、目をぱちくりとさせたまま固まっている。
場の緊張感が目に見えてなくなった。
「……あの、エロガキ」
カザルが眉間を揉みほぐしながら憎々しげに呟く。自分の戦術をずたずたにしたナチュラルっぷりに毒づく。
「ミルーダ、よ~く見とけ。あれがエロガキの本性だからなぁ」
「……これは……ひどいですね」
片眉を上げておもしろそうに話しかけるファールと、やや呆然と呟くミルーダ。
「……レイラ、やれ」
カザルがレイラを手招き。シガンを指さしてから、親指で首を掻っ切るジェスチャーをした。物騒である。
「ほいさ~」
レイラも苦笑を浮かべる。
「……いや、でも困るんだよね。俺がかっこいいのはわかるけど。愛人だったらおっけーよ。どう、あいじ……」
「シガンっ!」
呆然とするトモエになぜか嬉しそうにまくし立てるシガン、その横からレイラの声が響いた。
「へ?」
そっちの方向を見たシガンは……
「青!」
意識がブラックアウトした。

「うわぁ、最後にパンツ見られたよ……」
非常に嫌そうな顔で膝までの丈のスカートをはたはたと叩いて埃を払う。
そんな長さのスカートで側頭部に蹴りなどを見舞えば、それは見える。当然である。
「いやぁ、すんませんね」
トモエに対してレイラはへらっと笑った。
「あ、あぁ……変わった仲間だな」
いまだ硬直が解けていないのか、トモエが曖昧な表情で呟き……
「仲間とか言われるのって、結構心外です」
そしてレイラの返答に苦笑を浮かべた。

「痛いよぅ……ミルーダちゃん、ディオスちょうだい、ディオス」
「……お姉さま、あの方……トモエ様とおっしゃいましたか……なにを考えておられるのでしょうか?」
側頭部を押さえながら涙目でミルーダに訴えかけるシガンは露骨に無視された。
すでに戦闘、という雰囲気ではなかった。その意味でシガンの功績は大きい。誰も功績として認めていないけれど。
「質問がある」
剣を収めたものの……それでもなんとか緊張感を持続させようと、努力だけはしたままカザルがトモエに問いかけた。
「なぜ俺たちに、この前のように戦闘を仕掛けんのだ?」
「それは妾が門番だからじゃ」
トモエが静かに答える。シガンすらも黙ってその一言一句に聞き入っていた。
「先日の主らは……慢心、増長……およそ道を通るに値せなんだため灸をすえてやっただけのこと。妾は門番。資格のあるものは通すが役目」
カザルたちは顔を見合わせる。
「さぁ、このドアを開けるがよい……タイロッサム殿が待ちかねておる」
すっと自分の後ろのドアを指し示すトモエ。
「妾は門番……残念ながらそれ以上でもそれ以下でもない」
なぜか悔しげに……そして悲しげにそう呟いた。

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【2006年12月14日13:01 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
今回は高倉院嚴島御幸記。どんどんマイナーになっていくなぁ。

さてWiz時代考察。
昨日でリルガミンとトレボー城砦は別の場所、としてみたわけです、さらに『風よ』に以下記述があり。
『ありゃあもう百年以上前の話だなあ』とねぇ。ワードナに挑戦した精神体と#3の登場人物(主人公)が話すシーンです。また女王ベイキが#2のマルグダ王女のことを曾祖母と呼んでいるんで#2から#3までは100年以上の月日が流れてることが考えられます。
さてこの中で外伝がどこに入るか、ですが『風よ』の中でベイキ王女はニルダの杖を封印しておりそれ以後のリルガミン市民が杖の輝きに一喜一憂するとは考えにくいのですよ。となると外伝1は#3以前。そしてマルグダ王女はダバルプス呪いの穴に最初軍隊を派遣し、それが失敗したので冒険者を募った……トレボー城砦の成功例をここで聞いたのでしょうかね……とあります。つまりリルガミンにおいては冒険者に問題を解決させる、という方法は一般的ではなく、むしろマルグダ王女が最初の例なのではないかと推測されるわけです。
つまり外伝1は#2以後、#3以前となるわけですね。

また魔人ダバルプスはリルガミン王家をほぼ絶やしており、『リルガミン王家唯一の血筋』との記載が『風よ』にあるためベイキの祖母か母が外伝1の女王アイラスと考えられるわけですね。今の時点でどっちかって推測は出来ないわけですが。

……古本屋にいって高井先生の『ウィザードリィ外伝 女王アイラスの受難』買ってきたらこんな推測なんかしなくてもすむような気がしてきました。
いや、というか実家にあるよこの本……
……
うっさい! いいんだ! あのブドウはすっぱいんだ!
でも私、ほら、限られた資料とかで空白を埋める作業とかって嫌いじゃないから。ね?

あぁ、話は変わりますがプロフィール画像変更しました。
http://www.bighugelabs.com/flickr/warholizer.php
アンディー・ウォーホールっぽい画像自動作成ツール! その名もウォーホライザー!
……向こうの人の頭の悪さは尊敬に値しますね、100%褒め言葉として。
【2006年12月14日 13:34】| | 上杉霧音 #9a7c4dd135 [ 編集 ]
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