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【2024年04月19日18:07 】 |
Wizardry外伝1 受難の女王 その36

「ふぁ」
翌日大きく伸びをしながら右手であくびをかみ殺し、いつものようにメンバーの中で一番遅れて待ち合わせ場所に到着したファールの前にミルーダとシガンが立った。
「ほら、ミルーダ」
「はい……お姉さま、昨日はすいませんでした」
シガンに促され姉に頭を下げるミルーダ。
「ふにゃ……うん……」
ファールは寝ぼけ眼で曖昧に頷いた。


更科の里、姥捨山の月見んこと


「おぉ、階段発見!」
奥の院に到着して何日目だろうか、パーティはようやく第4層へと向かう上り階段を発見していた。
「よし、まだ余力もあることだし、覗くだけ覗きにいってみるか。ただし無理はせずに、ちょっと見て回ったらすぐに帰還するぞ」
カザルの宣言にメンバーの顔がいっそう引き締まる。
奥の院に到達して初めての階層移動。ダバルプス呪いの穴ですら階層移動すると強い敵が現れていたのだ。ましてや奥の院においてどれほどの悪魔が出てくることだろう。
静かに緊張感を持ったままメンバーは階段を上った。

階段を上った先は十字路、によく似た形の部屋だった。
東西南北、それぞれの先に扉がある。
ただの十字路でないところは北北東、北北西、西北西、西南西、南南西、南南東、東南東、東北東の8箇所にもそれぞれ扉が設けられていたことだ。
合計12箇所の扉に囲まれてメンバーは一瞬途方にくれた。
「こういう手がかりがない場所はどうも苦手だな」
呆れたように頭をかくカザル。
「ま、逆言えばどっちからでも攻められるってことでしょ。とりあえず北いってみよう、北」
レイラの言葉に軽く肩をすくめて北の扉を開けるカザル。
「んあ~、なんだこりゃ」
扉の先は左右に伸びる通路。その両端に右に上り階段、左に時空の裂け目があった。
「まだこの階層に来たばっかで階段なんぞ上りたくねぇし……この裂け目ってどうせあれだろ? 別の場所に行くっていう……まだ早ぇだろ」
「じゃあ別の扉開けようぜ」
シガンの提案に頷き、今度は東の扉を開けたメンバー……が……
「……あら」
意外そうな声を出すケイツ。それもそのはずで北側の扉の奥とまったく同じ構造であり、扉の先に左右への通路、その先に右の階段、左の裂け目となっていたからだ。
「次に行きましょう」
ミルーダが促し、メンバーは今度は西の扉を開ける。
しかしそこもまったく同じ、階段と裂け目以外になにもない場所だった。
再び中央部に戻り、考え込むパーティメンバー。
「こりゃあ……もしかしたら階段と裂け目で移動しまくって他の階層を探索しながら進む、っていう……何層かで1階ってタイプなんじゃねぇだろうな、ここは」
暗い迷宮の中でも鈍く光る明るい金色のヒゲを左手で撫で付けながらカザルは眉をひそめる。
「まだ決まったわけじゃないですよ。私も何層かで1階ってタイプの迷宮のような気はしますけど……あくまで気がするだけで確証はないですし」
ケイツが上目遣いでカザルに言う。だが無視された。
「はぅぅ」
「ま、なんにせよ南側の扉が残ってるし、そっちにいってみない?」
ケイツが悲しそうな声を漏らす中、レイラがドアを指さした。
「そうだな。よし、南にいってみよう……もし同じように階段と裂け目があるようなら階段を上ってみよう……ケイツは念のために脱出用のマロールの準備を頼む」
ケイツがカザルの言葉に頷き……そして南のドアが開かれた。
「あ、うわ」
あまりにも予想外の光景にファールが眩暈を起こしたようにふらつく。
扉の先が左右に伸びる通路、そこまでは北西東変わらない。だが北西東側はすぐに階段なり裂け目なりが確認できたのに対して南の通路は左右の通路があまりにも長く伸びている。
「ん~、向こうが見えませんね、っと」
ミルーダが気づいたように普段隊列の先頭にいるファールのムラマサの先端に灯かりをともす呪文を唱えた。
ファールがその灯かりを通路の奥に照らしつけようとするが奥までがあまりにも遠すぎてどうなっているのか確認できない。
「変化がありすぎるってのも困りもんだな」
苦笑するカザル。
「とりあえず右側にいってみよう。突き当りまで行きゃなんかあるだろう」
カザルの号令により歩き始めるメンバー。
どのくらい歩いただろうか、迷宮内において時間を示す太陽など当然のようにありはしない……だからこそパーティメンバーにとってはあまりにも長い時間、最初と変わらない通路が奥へと延びていた。やがて……
「やっと行き止まりか」
カザルの言葉どおりムラマサにともされた灯かりの向こうに扉が浮き上がる。
「まだこの階層にきてから戦闘なんてしてないからな。この扉の向こうが玄室だとすりゃ、この扉を開けたら、それが初戦闘になるだろう……まずは様子見ながら行くぞ」
カザルの言葉にやや緊張感を漂わせた、しかし笑みを含んだ顔でファールが扉を蹴破るためにそっと足をかける。
「レディ?」
「イエー」
やはり軽い表情でレイラが親指を立て、カザルも答えこそしないものの頷く。
シガンも槍を、ミルーダとケイツもそれぞれ杖を構えた。
「ゴゥ!」
ファールが扉を蹴破った。

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【2007年01月02日07:03 】 | Wizardry小説 | コメント(1) | トラックバック()
コメント
無題
今回のタイトルは更科紀行。

ん~、ちょっと文章が中だるみしてますね。いかんいかん、モチベーションを保たなきゃ。
【2007年01月02日 07:04】| | 上杉霧音 #9364166429 [ 編集 ]
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