<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:blogChannel="http://backend.userland.com/blogChannelModule" >
  <channel>
  <title>かくて冒険者は陽光に踊る</title>
  <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/</link>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="self" type="application/rss+xml" href="http://team2004.blog.shinobi.jp/RSS/" />
  <description>純度100％抜け毛ブログで御座います（霧吹嬢ご命名）</description>
  <lastBuildDate>Mon, 08 Jan 2007 08:31:26 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com/" />

    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その42</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>カザルがマリクから聞いた悪魔の胸当ての使用法を説明するとパーティメンバーが初耳、という顔をした。<br />
「すごいねぇ、呪われてるくせに」<br />
ファールが感心したように言う。<br />
「&hellip;&hellip;くせに、って」<br />
ケイツが呟くが相変わらず誰も聞いていない。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">二月の中の五日は、鶴の林に薪尽きにし日なれば</font></strong></p>
<p><br />
奥の院第4層。<br />
パーティは長い通路の探索はひとまず置いておいて、斜め方向へと向かう8つの扉から攻略することに決めていた。<br />
「じゃあどこからいくか、だが&hellip;&hellip;どれでもそうかわりそうにねぇなぁ」<br />
頬をかくカザル。<br />
「勘に任せて北北東から行くか」<br />
ぎぃ&hellip;&hellip;<br />
扉を開けるさび付いた音。<br />
その向こうからモンスターに襲われることはなかったが扉の向こうの通路の向こう側に暗闇がわだかまっているのが見えた。<br />
「ったく、ダークゾーンかよ、よりによって。灯火の魔法が打ち消されるのも面倒だし、別の扉から開けていくぞ」<br />
カザルがそういって引き返そうとして&hellip;&hellip;<br />
ゴウン。<br />
いい音を立てて壁に正面からぶつかった。<br />
「&hellip;&hellip;！？　&hellip;&hellip;！？　&hellip;&hellip;！？」<br />
鼻を押さえて正面を見るカザル。<br />
そこにあったはずの扉は消え、目の前には壁だけがある。<br />
「えっと&hellip;&hellip;？」<br />
念のためにファールが地図の魔法を唱えるがテレポーターに巻き込まれたということも、回転床で方向を間違えているということもない。つまり&hellip;&hellip;<br />
「一方通行かよ」<br />
カザルが嘆くように呟いた。</p>
<p>ダークゾーンへ入りそこから南へ。その通路はすぐに行き止まりとなっており、そこでファールが再び地図の魔法をとなえると東北東の扉の向こう側であることが判明した。<br />
「ほうほう、北北東と東南東の扉は中で繋がってるわけだな、よしよし」<br />
「あんまよしよしでもねぇんじゃね？　やっぱりこっちも一方通行なんだから」<br />
地図を見ながら満足そうに言うカザルにファールが突っ込みを入れる。<br />
地理を把握してからパーティはダークゾーンを北側に抜けた、が&hellip;&hellip;<br />
「ぎゃー！」<br />
「ぐあっ」<br />
ダークゾーンを抜けた瞬間パーティが足を踏み入れるはずの床は落とし穴。前衛3人が情けない格好で穴にはまることになる。<br />
「はははー&hellip;&hellip;一方通行にダークゾーンにピットとはなかなか面白い趣向じゃない」<br />
額に青筋を浮かべながらレイラが口を開けてけらけらと笑う。<br />
後衛3人に手を借りて穴から抜け出た前衛3人。その中でカザルは穴を覗き込みながら不思議そうな顔をしていた。<br />
「どったん？」<br />
「いや&hellip;&hellip;この罠には殺意はねぇよな」<br />
質問するレイラにカザルは歯切れ悪そうに答えた。<br />
「いや、痛かったって。めちゃめちゃ痛かったって。ここ擦りむいたんだよ、ほらぁ！」<br />
カザルに反論するようにファールが自分のひじの部分をカザルに向けた。ちょこっと皮が捲れて血が出ている。<br />
ファールを手でどうどう、と落ち着けておいてからカザルは再び口を開く。<br />
「でも擦りむいた、ですむ程度だろ？　例えばこの穴の下に槍なんぞが仕組んであったらどうだ？　つまり穴に落ちたら突き刺さるような仕組みだな」<br />
「ちょっと&hellip;&hellip;やめてよ」<br />
一瞬だけ体中が落とし穴の底に仕掛けられた槍で串刺しになって息絶えている姿を想像してしまったのだろう、青い顔になって止めるファール。<br />
「でもそれほど難しい仕組みじゃねぇだろ？　時間さえあれば今の俺らにだってこの穴を致命的な罠に作り変えることが出来る」<br />
確かにカザルの言うとおり、その意味でのこの落とし穴は生命を奪う要素を何一つ持っていない、甘っちょろい仕掛けであった。<br />
「なぜここで俺たちを殺そうとしないんだ？　やろうと思えば出来たはずだ&hellip;&hellip;現にこの落とし穴に引っかかっちまったんだからな」<br />
あごに手を当てて呟くカザル。<br />
パーティメンバーも『言われてみれば確かに』と考え出す。<br />
やがてケイツが口を開いた。<br />
「&hellip;&hellip;殺すつもりはなかった。でも仕掛ける意味はあった、ってことですよね」<br />
「まぁ&hellip;&hellip;そうだな」<br />
ケイツの疑問にカザルが上の空で答える。<br />
「殺すつもりはなかった、と言うより『殺さなくてもよかった』&hellip;&hellip;つまりどっちでもよかった、と考えるなら時間稼ぎが目的なんじゃないでしょうか？　穴に落ちれば、どうしてもその治療とかのために時間使っちゃいますし、現に私たちだって今、こうやってこの穴の存在価値について話し込んじゃってるわけです。これって&hellip;&hellip;例えばあとほんの少しだけの時間があればなにかを成し遂げることが出来る、って人間にとって十分な時間を稼げるんじゃないでしょうか&hellip;&hellip;ってぇ」<br />
ケイツは呆然とした。誰も話を聞いていなかったからだ。<br />
カザルにいたってはケイツに一番最初に返事をしたのに聞いていない。<br />
「うわ、すごい酷い」<br />
驚いたように呟くケイツ。そのまま奥の院の石床にのの字を書き始めた。<br />
「まぁ、ここで考えてても仕方がない。とりあえず前に進むぞ。ケイツもそんなとこでしゃがみこんでるんじゃない&hellip;&hellip;なんで睨むんだ、お前は」<br />
前進宣言をしたカザルはケイツにすごい目で睨みつけられた。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE42</link>
    <pubDate>Mon, 08 Jan 2007 08:31:26 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/43</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その41</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「あっれ？　ドルツは？」<br />
ハロゥが集合場所にいつまでたっても姿を現さない巨漢をいぶかしむように言った。<br />
「なぁんか血相変えて宿から出て行ったぞ」<br />
「へぇー」<br />
だからどうろいうわけでもなくハロゥはクッキーをかじった。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">このえん仏ぼうくだられ候う</font></strong></p>
<p><br />
「ふぁ、ふぁーるさんはぁっ！？」<br />
血相を変えて神殿に飛び込んできたドルツに神官たちが迷惑そうな視線を送る。<br />
当のファールはといえば寝台に横たわったままカザルと何事か話をしていたがドルツの姿を見て満面の笑みを浮かべながら右手を上げた。失われた左手も元通りになり、体力を失っていることを除けば完全復活といっても過言ではないだろう。<br />
またシガンとミルーダも蘇生に成功しており、パーティはなんとか全員失われることなく帰還できていた。</p>
<p>ファールの犠牲によって奥の院からの脱出を果たした3人はダバルプス呪いの穴の5層から歩いての帰還を果たしていた。<br />
もちろん奥の院脱出後もモンスターの襲撃を受けていたものの、奥の院に出現するモンスターとはやはりレベルが違う。奥の院を探索することが出来るパーティにとって、3人だけとはいえ、ダバルプス呪いの穴のもんスターたちは障害にはなりえず、闘争と戦闘を繰り返し&hellip;&hellip;道中ケイツが毒を受けるトラブルもあったものの残り1個の特効薬を使用することによってなんとか耐え、ここリルガミンへ帰還していた。</p>
<p>「ふぁーるざん&hellip;&hellip;よがっだぁ」<br />
ファールの姿を見てへたり込むように座り込んだドルツにファールは苦笑を浮かべた。<br />
「油断しちゃったって。心配かけてごめんねぇ」<br />
「油断っつーか、あれは&hellip;&hellip;なぁ」<br />
ファールの言葉にぼやくカザル。ファールの機転で助かったことは事実とはいえ、犠牲が出てしまったことに不満が残る。<br />
「ま、なんとか生き延びることが出来たし。しばらくは安静だろうけど、その間の探索はよろしくねー」<br />
ファールのウィンクにドルツは安心したような顔で頷いた。</p>
<p>「やっぱ回復薬はもっと持って行くべきだな」<br />
蘇生したばかりの3人を宿に押し込み、酒場に向かったカザル、レイラ、ケイツ。カザルが気難しそうな顔をして呟いた。<br />
「本当だったら僧侶がほしいんだけどねぇ。まぁ、現状はエロガキのマディ2回、これを回していくしかないでしょうね」<br />
肩をすくめながらエールをあおるレイラ。<br />
「&hellip;&hellip;誰かが僧侶に転職する手段もないわけじゃないですけど、それはそれで時間がかかっちゃいますし、そうなると現状のまま、薬を多めに持っていく、しかないんじゃないでしょうか」<br />
溜め息をつくように呟くケイツ。<br />
「どうであれ3人の回復を待つ間、恐らく3日程度は探索も中断だ。その間に準備だな」<br />
パーティメンバーを変更するようなことになればまた連携面の建て直しを一から構築せねばならない。だからこそ、そのような方法は最初に除外されていた。<br />
考えられる方法は今のメンバーのまま死なない方法&hellip;&hellip;そのようなものがあるのだろうか。</p>
<p>「やぁ、昨日はドルツがそっちにいかなかかったかい？」<br />
翌日&hellip;&hellip;酒場でひじをつきながら考え事をしていたカザルにマリクが声をかけた。<br />
「ん？　あぁ、ドルツならきたぞ。そのままうちのファールの看病にはいったみてぇだがな」<br />
「あぁ、やっぱり」<br />
カザルの答えに苦笑するマリク。<br />
「昨日はあいつが集合場所に来なかったからね。やっぱりそっちだったか」<br />
「あぁー&hellip;&hellip;まぁ、ドルツはファールにベタボレだからなぁ」<br />
カザルも苦笑を返す。<br />
「ってことは、サムライ1人失えば探索も昨日は中止か？　ご苦労だったなぁ」<br />
「まさか。あいつがいなくても『楽が出来ない』ってだけで探索自体は可能だからね」<br />
マリクの言葉に意外そうに目を開くかザル。<br />
「ほう、そりゃ余裕だな。まぁ、お前さんとこには僧侶がいるから楽かもなぁ」<br />
「そうだね。やっぱり防御面では頼りになるよね&hellip;&hellip;でも君のところにもロードとビショップがいるんだから条件はほぼ同じだろう？」<br />
カザルは肩をすくめながら溜め息をつく。<br />
「いや、やっぱり僧侶ほどの成長が見込めるわけじゃねぇからな。まだ使えない呪文も多いみたいだし」<br />
「&hellip;&hellip;そんなに使えない呪文が多いのかい？　それはまいったね」<br />
カザルの言葉にいかにも意外だというふうに目を見開くマリク。<br />
「2、3レベル程度の呪文も唱えられないなんて、難儀な職業なんだねぇ、ロードというのは」<br />
感心するように呟くマリク。<br />
「へ？　&hellip;&hellip;お前らそんなに軽傷すらおわないのか？」<br />
そのマリクにやはり意外そうに問い返すカザル。<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
しばらく沈黙が落ちた。<br />
「なにか話に食い違いがあるようだね？」<br />
「あぁ、俺もそう思ってたところだ」<br />
頷きあう2人。<br />
「僕のいってる僧侶呪文というのはパーティの防御力を高める補助呪文なんだけど、そこまではいいかな？」<br />
「そうなのか？　俺はてっきり回復呪文のことかと思ってたぜ」<br />
なるほど、と頷くマリク。<br />
「確かに戦闘中のケガを早く治すに越したことはないけど&hellip;&hellip;でも戦闘後だったら悪魔の胸当てをつかえばいいじゃないか」<br />
「なんだそりゃ？」<br />
間抜けな声を出すカザル。<br />
悪魔の胸当て。これを着用すると歩くだけで体力を消耗するというカースアイテムである。<br />
もちろんこんなものはダバルプス呪いの穴にごろごろと転がっており、パーティにとっては『ただ売るだけのアイテム』であった。<br />
しかし&hellip;&hellip;<br />
「知らないのかい？　あの胸当てに秘められた魔力を開放すると体力を完全に回復させることが出来るんだよ？」<br />
「うそ&hellip;&hellip;？」<br />
マリクの言葉にカザルは間抜けに口をあけた。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE41</link>
    <pubDate>Sun, 07 Jan 2007 02:48:54 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/42</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その40</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>奥の院第5層。<br />
パーティはようやくここまで帰ってきていた。<br />
すでにシガンとミルーダは力尽き、残るメンバーも体力の大部分を失っている。なにより2人を失ったことで回復魔法を唱えることの出来る人間がいなくなっていた。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">さて、二条より西ざまに遣らせて行くに</font></strong></p>
<p><br />
第5層。<br />
6人揃っていれば、それほど大きい問題もなく通過できる場所ではあるが今のバランスを欠いた状態であれば非常に危険な場所であった。<br />
「傷薬はあるか？」<br />
「んー、こっちは&hellip;&hellip;特効薬が1個」<br />
カザルの言葉に物憂げに答えるファール。<br />
「こっちはゼロ」<br />
「あ、私も特効薬が1個です」<br />
レイラとケイツも答える。<br />
「俺もゼロ、ってことで合計2個か&hellip;&hellip;うーむ」<br />
あごに手を当てて考え込むカザルに、ファールはケイツと目配せして特効薬を渡す。<br />
「ほい」<br />
「お、おい！？」<br />
カザルは慌てたように目を白黒させた。<br />
「いやぁ、もうある程度は死も覚悟してるからね。でも誰か1人が地上まで死体引きずってくれりゃ生き返られる可能性だって低くないわけで。だったら体力が一番高い戦士に任せとくのが当然だろ」<br />
「そ、そうですよ。死ぬのは怖いけど、全滅しちゃうのはもっと嫌ですから。可能性で言えばカザルさんが生き残る可能性が高いですもん」<br />
カザルは眉をしかめて考え込んでいたが、やがて肩をすくめる。<br />
「ちっ、俺1人に面倒を押し付けやがって」<br />
言いながら特効薬を1個、飲み干した。</p>
<p>そこからも激戦であった。<br />
下級魔族、吸血鬼、闇に落ちた神官、火の巨人&hellip;&hellip;<br />
しかしこの連戦に4人は奇跡とも言えるほどのコンビネーションを発揮してなんとか切り抜けていた。<br />
やがて、あとは通路を北上すれば奥の院からの脱出が出来る地点まで到達する。<br />
だが&hellip;&hellip;</p>
<p>「&hellip;&hellip;ここまできてッ」<br />
ファールが左手を布で縛る。<br />
そのひじから先は失われ、石の床の上に落ちていた。<br />
火の巨人の操る剣がとらえていたのはまさに急所であり、それを腕一本で済ませたのはまさに僥倖といえた。だが&hellip;&hellip;<br />
僧侶魔法であれば、また特効薬の効果があれば回復は可能であるものの&hellip;&hellip;ファールはパーティに残り1個だけ残された特効薬をカザルから決して受け取ろうとしなかった。<br />
「お前！　死にたいのかっ！」<br />
「死にたくないっていってるでしょ！　だから飲まないんだって！」<br />
ようやく腕をきつく縛ることによって失血を止めたファールがカザルに叫び返す。<br />
「私は特効薬をカザルに渡した時点でもうなにが起こっても覚悟は決まってる！　そっちも受け取ったんなら覚悟決めてよ！」<br />
ケイツも濃い疲労を表情に浮かべながら、それでもおろおろと仲裁しようとするが言葉が見つからないようだ。<br />
「バージャル、ここはバルのいう通りだってば。リーダーなんだからワガママ言わずにあきらめたらぁ？」<br />
レイラが見かねたように苦笑を浮かべながら仲裁する。<br />
「俺はカザルだ」<br />
「私はファールだ」<br />
仲裁したが名前が間違えている。<br />
「そっ、そんなのもういいじゃん！　リーダーなんだから甘えんな！」<br />
「くっそ、リーダーなんか引き受けるんじゃなかったぜ」<br />
珍しく赤くなって言い返すレイラ。それを聞くカザルのぼやきに残り3人が薄く笑った。</p>
<p>「&hellip;&hellip;で、ここにきて、なのかよ」<br />
もうあと数十歩も進めば裂け目に飛び込むことが出来る。すぐ後ろに裂け目が見えているのだ。<br />
そんな位置でパーティに襲い掛かったのは最悪の敵だった。<br />
ブロンドの女の姿をし、しどけない姿で男を誘惑する、だが背中から黒い羽をはやした悪魔が4匹。闇に堕ちた騎士が2人。<br />
そして&hellip;&hellip;あまりにも醜すぎる顔のロード。闇に堕ちたために天から呪いを得たロードが立ちはだかっていた。<br />
「どうすんの？」<br />
間合いをじりじり詰めながらレイラがカザルに聞く。<br />
「真ん中のロードさえいなきゃ退却ってのがベストなんだがな&hellip;&hellip;今の状況じゃそれも難しいだろうよ。となりゃ戦うしかねぇ」<br />
退路の導線。そのちょうど真ん中をロードに遮られており、このまま退却は難しいだろう。ロードを相手にすることの困難を承知していながら、吐き捨てるようにカザルが言う。<br />
「&hellip;&hellip;んじゃあ退却しようって」<br />
前衛3人の中で一番体力を失っているために2人から少し後ろにポジションをとっていたファールが簡単に言った。<br />
「だから&hellip;&hellip;退路がねぇんだってば」<br />
呆れたように後ろも見ずに言い返すカザルに、後ろから笑みを含んだ気配。<br />
&hellip;&hellip;ファールが、笑っている？<br />
いぶかしそうなカザルにファールはさらっと言い切った。</p>
<p>「死体回収はお願いね」</p>
<p>ファールが2人の間をすり抜けてモンスターに向かって突進する。<br />
そのファールの行動は神速といっても過言ではなかった。だがそれはロードの間合いである。突進するファールにロードは迷いもなく剣を繰り出す。<br />
ぞぶっ。<br />
肉を絶つ音。ロードにとってはこれで終わる&hellip;&hellip;そのはずだった。<br />
だが&hellip;&hellip;<br />
ファールは体に刃を食い込ませたまま、右手でムラマサを振るいロードの首を刎ねる。<br />
「は、やく行、けってぇッ！」<br />
すでに命の炎を消しながらも絶叫するファール。その体を横から奪うように引きずり、悪魔や騎士たちの追撃を振り払いながら、パーティは裂け目へと飛び込んだ。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE40</link>
    <pubDate>Sat, 06 Jan 2007 11:55:16 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/41</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その39</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>スプリガン。<br />
この巨人はそもそも古代の財宝を守護する妖精であり、数ある妖精族の中で最も攻撃的な存在として知られていた。<br />
財宝の守り手として知られるこのモンスターがなぜこの迷宮に存在するのかはわからない。<br />
だがこの巨人の存在がパーティにとって驚異的である事実は変えようがなかった。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">亭子のみかといまはおりゐ給ひなんとするころ</font></strong></p>
<p><br />
シガンの首が通常ありえない方向に曲がっている。<br />
冒険者にとって『死』は絶対的なものではないとはいえ忌避すべきものであることは間違いない。<br />
もうこれ以上の犠牲者を出すことは出来ない&hellip;&hellip;<br />
カザルとファールが同時に斬りかかる。<br />
ファールの攻撃は避けられ、カザルの攻撃は微々たるダメージのみを与えるに留まった。<br />
しかし、それはフェイント。<br />
カザルの肩を踏み台にしてレイラがスプリガンの目の高さまで跳躍する。<br />
『取った』と誰もが確信した絶妙のタイミングだった。<br />
レイラの攻撃は確かにスプリガンの眉間を捉えた&hellip;&hellip;ように見えたし、レイラ自身もそう確信していただろう。<br />
しかしスプリガンの急所からはそれていたようだ。必殺の攻撃はその効果をあらわさず、スプリガンは目の前まで跳躍したレイラをハエでも追うかのように右手を振って追い払う。<br />
「&hellip;&hellip;ッ！？」<br />
その勢いのままレイラは壁に叩きつけられ、口から血を吐き出した。<br />
ミルーダがすぐに回復呪文を唱え始めるが、その前にスプリガンが動き出していた。<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
無言で毒の息を吐き出すスプリガン。<br />
その攻撃に体力を失っていたミルーダが倒れ、また他のパーティメンバーも深刻なダメージを受けていた。<br />
しかしそれだけではすまない。<br />
「ん&hellip;&hellip;んん」<br />
ファールがぼうっとする頭を振ってなんとか耐えようとするものの片膝をつく。その横でカザルが床に倒れた。<br />
睡眠のブレス。パーティ全体を相手に灼熱のダメージを与えるとともに、昏睡状態に陥らせる&hellip;&hellip;恐ろしい攻撃であった。<br />
ファールは意識朦朧としており、カザルはすでに夢の中だ。レイラはすぐに治療が必要な状態であり、動くことは出来ないが、治療が出来る人間は2人とも命を失っていた。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
杖を構えながらケイツが前に出る。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
ケイツもすでに体力の大部分を失っており、まともに立っていられる状況ではない。だがそれでもなおこのパーティで一番傷が浅いのはケイツであった。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
スプリガンは今なら油断している。前衛を3人とも無力化し、前に出てきたのがこんなチビの魔導師なのだから。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
ケイツがぎゅっと杖を握り締める。スプリガンの口の端が笑ったように持ち上がった。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
今の自分の武器はレベル2、3、6の魔導師魔法。レベル6に属する攻撃魔法ラダルトは吹雪を巻き起こす魔法であるが、それ一撃であいつを倒すことが出来るだろうか。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
それはあまりにも確実性にかけるだろう。ならば同じくレベル6に属するロカラはどうか？　相手を地割れに巻き込み一瞬で全滅させる呪文である。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
地割れに？　空中に浮かんでいる敵をどうやって地割れに巻き込むというのだ。しかもレイラの改心の一撃さえ致命的な傷を与えられなかったではないか。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
致命的な傷とはなにか？　ニンジャは生物であれば必ず体中に走っている『生命の線』とも呼ぶことが出来るものを読むことが出来るという。それを一瞬で絶ち、相手を殺すのがニンジャの一撃必殺攻撃の正体であった。<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
では先ほどの攻撃はなぜ一撃にて葬れなかったのか？　それ以前になぜスプリガンはこの場所に存在しているのか？<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
スプリガンはもともと財宝の番人。この地に財宝がないとは言わないが、すぐに手に入れられる場所にあるわけではあるまい。なのにスプリガンはここでなにを守護しているのか？<br />
&hellip;&hellip;考えろ。<br />
なぜレイラの攻撃は効果をあらわさなかったのか？　なぜスプリガンはこの場所にいるのか？<br />
&hellip;&hellip;ゆっくりとケイツは呟く。<br />
「お前が死人だからだ」<br />
死人であれば『生命の線』は通常の生物とは違うところを走っているだろう。悪しき呪法の末であれ、『動くもの』には『生命の線』は走っているのだから、ただレイラの予想とは違う場所だったということなのだろう。<br />
死人だからこそ、わざわざ生き返され財宝もない場所で番をすることを『誰か』に命じられるだろう。僧侶魔法のディ、カドルトではない邪悪な法には死者を使役する呪文もあると聞いている。<br />
「碧叢叢高挿天&hellip;&hellip;」<br />
静かに詠唱を始めるケイツ。<br />
自分の推論を疑うわけではない。<br />
スプリガンがなにかの予感を嗅ぎ取ったかケイツに止めを刺そうと襲い掛かる。<br />
だが&hellip;&hellip;2歩足りない。<br />
「&hellip;&hellip;ジルワン」<br />
ケイツの唇から力ある言葉が紡がれる。それは不死者を長しえの眠りにつかせる呪文。ケイツに残された6レベル魔法。<br />
その言葉とともにスプリガンはざぁっと音を立て塵と化した。戦闘のあとはなにも残らず&hellip;&hellip;<br />
「はぁ&hellip;&hellip;」<br />
ケイツが精神力を使い果たした顔で尻餅をついた。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE39</link>
    <pubDate>Fri, 05 Jan 2007 03:54:22 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/40</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その38</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>マロールがもうない。ケイツのこの言葉にカザルはまだ楽観的だった。<br />
「ったく、しょうがねぇな&hellip;&hellip;シガン、ロクロフェイト頼むわ」<br />
苦笑しながらリルガミンへ直帰することのできる魔法を使うように言う。ロクトフェイトは一度使うと再度覚えなおさなければなさないという特殊な魔法であり、だからこそ切り札なのだ。<br />
シガンは珍しく青い顔をしてカザルに言う。<br />
「さっきのファールとカザル治療のためのマディで&hellip;&hellip;ロクトフェイト使い切っちまったよ」</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">元日に二條のきさいの宮にて白き大袿を給はりて</font></strong></p>
<p><br />
呪文行使者が呪文を唱えるためには精神の特定の階層に大きな負担をかけるといわれている。<br />
呪文のレベルはこの精神の階層を示しており、呪文を行使した魔法使いはその特定の領域を疲弊させていくのだ。<br />
これがマジックポイントとも呼ばれる魔法の行使回数であり、地図を示す魔法&hellip;&hellip;デュマピックを使い切ってしまうと他の高位のマジックポイントが残っていたとしてもデュマピックは使うころができないという所以であった。<br />
マロール&hellip;&hellip;テレポートの魔法は魔導師魔法7レベルに属しており、魔導師魔法を行使できるのはケイツ、ファール、ミルーダの3人。しかしファールとミルーダは本職の魔導師ではないのでこの呪文を使うことは出来ない。<br />
マディ&hellip;&hellip;回復の魔法は僧侶魔法6レベルに属しており、ロクトフェイト&hellip;&hellip;帰還の魔法と同じ領域である。そして僧侶魔法を行使できるのはシガンとミルーダの2人なのだが、やはりミルーダは本職の僧侶ではないためまだこの呪文を使うことは出来ない。</p>
<p>パーティはリルガミンへの帰還方法を失っていた。</p>
<p>「っ&hellip;&hellip;やってられんな」<br />
その後のカザルの行動は『リルガミン屈指の戦術家』の名に相応しく迅速だった。<br />
帰還方法が尽きていたことを悟った瞬間&hellip;&hellip;恐らく奥の院に到着してからずっと見張っているであろう『敵』に追撃の準備を用意をさせることなく、すぐに足での自力帰還を宣言し、キャンプをすぐにたたむとかなりの早足で歩き始めていた。<br />
しかしカザルの、その迅速な行動があってなお、あの東西に伸びる長い通路で1度目は闇に堕ちた騎士たち、2度目は光の玉を引き連れた縞模様の巨人という2度の戦闘を回避しきれず、もはやパーティは死人こそいないものの満身創痍であった。<br />
しかし、ようやくにして&hellip;&hellip;<br />
「ふぅ」<br />
レイラが溜め息をつき、ファールがムラマサを油断なく構えたまま通路の逆側を警戒する。<br />
第5層へと向かう階段のある部屋、その扉の前にようやくパーティは達していた。<br />
ケイツが扉に手をかける。ケイツ自身が現在使用できる呪文は2、3、6レベルの呪文のみであり、しかもその数も少ない以上自然と切り札的な扱いとなってくるため、せめてドアをあけ、前衛が室内に侵入したときに隊列を整えやすいようにすることだけが今の彼女の仕事であった。<br />
ドアの向こう。さきほどこの場所を通ったとはいえ、この通路でも2度の戦闘に巻き込まれた以上、この向こうにも敵がいると考えたほうが自然だろう。<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
シガンの顔に緊張が浮かび、ミルーダも扉を&hellip;&hellip;恐らくその向こうにいるものを睨みつけるように眉を寄せる。<br />
「ケイツ、オーケーだ」<br />
カシナートの剣を構えたままカザルが指示をだし、その一瞬後、ケイツがドアを開けた。</p>
<p>「へっ？」<br />
一番最初に間抜けな声を出したのはシガン。<br />
部屋の中から、パーティが予想していたような襲撃はなにもなかった。<br />
「ん～？」<br />
ファールが眉を寄せて困った顔をする。<br />
「へぁ」<br />
緊張していたものが解けたのかレイラも情けない声を漏らした。<br />
「いやぁ、なんもいねぇいねぇ。でも5層もクリアしなきゃ帰れねぇし、とっとといこうぜ」<br />
シガンが室内、その中心の階段に向かおうと一番に走り出す。</p>
<p>サムライは気を使い、気を操り、それにより戦う職業といわれる。<br />
気とはそれほど珍しいものではない。誰かが後ろにいれば『気配』は感じることが出来るだろう。<br />
『気配』が消えていたとしても、相手に対しての害意があれば必ず『殺気』は放出される。むしろ『殺気』を使うことによって『気配』を消していると考えればいいだろう。<br />
そういったなにかしらの『気』を使い、戦い、ときには相手の『気』を読むのがサムライであった。<br />
&hellip;&hellip;シガンはサムライでなくロード。<br />
部屋に一番最初に侵入したのがファールであれば避わすことができただろう。</p>
<p>「シガン、上っ！」<br />
ファールの注意は間に合わなかった。シガンはいきなり空中に具現化した巨大な腕に吹き飛ばされ、そのまま壁に激突し、ぴくりとも動かない。<br />
「シガ&hellip;&hellip;ッ！」<br />
ミルーダがそちらに駆け寄ろうとするもののまずは敵を倒さなければ&hellip;&hellip;隙を見せればどうなるかわからない。<br />
腕&hellip;&hellip;いや、敵はもはやほぼ全身が具現化しつつあった。<br />
あの苦戦した氷の巨人にも匹敵するほどの巨体。しかしその下半身はもやのように曖昧になっており、空中に浮かんだままその屈強そうな上半身でパーティを威圧してくる。<br />
あまりにも醜いその容貌にケイツは小さな声で呟いた。<br />
「スプリガン&hellip;&hellip;！」<br />
&hellip;&hellip;シガンはぴくりとも動かない。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE38</link>
    <pubDate>Wed, 03 Jan 2007 22:32:03 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/39</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その37</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>ドアを開けると部屋の隅から巨体をもてあますように、人間に比べてあまりにも大きい存在がのっそりと身を起こした。部屋が暗いため正体はよくわからないが&hellip;&hellip;<br />
「でかー」<br />
シガンが呆れたような声を出しながら斬りかかる。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">すべらぎのみことのりを承りてわが國の大和歌を撰ぶこと</font></strong></p>
<p><br />
シガンの槍は見事巨人の体をとらえる。だが&hellip;&hellip;<br />
「かってぇ！」<br />
あまりの硬質な感覚にシガンが舌を巻く。<br />
その言葉を受けてケイツが巨人の防御力を下げるため呪文を詠唱する。<br />
「客行新安道、喧呼聞点兵&hellip;&hellip;モーリス！」<br />
しかし&hellip;&hellip;<br />
「えぇっ！？」<br />
意外そうな声を出すケイツ。<br />
渾身の力ある言葉は巨人によってプロテクトされ効果を顕すことはなかったのだ。<br />
「あぁもう！　ケイっちゃんは続けてモーリスお願いっ！」<br />
そういって剣を振るうレイラ。だがそれも浅く、巨人を怒らせただけだった。<br />
「だったらこれはどうだぁ！」<br />
ファールもムラマサを構え突進する。その後ろからは愉快な形状の殺戮武器、カシナートの剣を構えたカザル&hellip;&hellip;だが、その剣が届くよりも巨人の動きのほうが早かった。<br />
巨人は大きく息を吸い込み、そして大きく息を吐き出す。<br />
「あいたぁっ！」<br />
氷のブレス。カザルはなんとか耐えたものの最前線でムラマサを振り上げていたファールは左腿に大きな氷の刃を受け、転倒した。<br />
そのまま巨人がファールを踏み潰そうと足を踏み出すが、それはカザルの剣に押され後退する。<br />
「&hellip;&hellip;ファール立てるか？」<br />
「ん、なんとか」<br />
カザルによって一命は取り留められたもののファールは青い顔でふらふらと立ち上がった。氷の刃は動脈を傷つけており、溢れた血は止まりそうもない。<br />
「かっこ悪いなぁ&hellip;&hellip;」<br />
苦笑するファールに向かってシガンが回復の呪文の詠唱を始める。<br />
ミルーダも眠りの呪文を唱えるもののやはり巨人によって無効化されていた。<br />
「こりゃあ剣じゃないほうがよさそうね」<br />
呟き、剣を投げ捨てるレイラ。<br />
それと同時に鎧の留め金もはずし、兜も脱ぐ。<br />
ニンジャ本来の姿。トモエに敗れて以来の久々の戦闘スタイルだった。<br />
しかしその間も巨人の猛攻はやむことはない。<br />
ようやくケイツの呪文が効果を発揮したもののカザルは攻撃を避わされ、逆にその丸太よりも太い腕で殴られ膝をついていた。<br />
ファールも回復したもののあまりにも急激に血液を失ったため満足に攻撃が出来る状況ではない。<br />
巨人は満足に攻撃が出来ないパーティを見、一瞬笑うと再びブレスを吐くべく大きく息を吸い込む。</p>
<p>そしてそれが大きな隙となった。</p>
<p>玄室の壁面を蹴り、巨人の頭部近くまで一瞬でジャンプしたレイラ。<br />
巨人もそれに気づき、一瞬前まで簡単に踏み潰すことの出来ると思っていた存在が目の前までジャンプしていることへの驚愕に目を見開きながら払い落とそうと手を挙げようとするが&hellip;&hellip;もう遅い。</p>
<p>レイラの手刀が巨人の眉間をえぐった。</p>
<p>「うやぁー、血が大変なことになってるよ」<br />
巨人の血を真正面から浴び、全身が真っ赤に染まったレイラが情けなさそうな声を出す。<br />
シガンがカザルの治療に取り掛かり、ケイツとミルーダが急いで魔物よけの結界を張る。<br />
「おっつかれぇ」<br />
ケガをした左腿を押さえらまま床に座り込み、青ざめ、しかしそれでも笑みを含んだ顔でファールがレイラを出迎えた。<br />
「水浴びでもしたいもんだね」<br />
ファールに苦笑して答えるレイラ。<br />
「帰って公衆浴場でも行くか」<br />
けらけらと笑うファール。<br />
ようやく治療の終わったカザルが立ち上がった。<br />
「そうだな&hellip;&hellip;かなりのダメージを受けた上に敵も予想以上に強い。今日はそこの宝箱でも開けて、帰って寝るか」<br />
そこ、とカザルが指差した先には、恐らく巨人が所持していたのであろう宝箱が落ちていた。<br />
「もう～、人使い荒いなぁ」<br />
口では文句を言いながら、それでもにこにこと笑って宝箱に近づくレイラ。<br />
「んー、これはなんだぁ？　石化かな？　石化させるやつかな？」<br />
手馴れた様子で宝箱のトラップを探り、そのまま解除しようとするレイラ。<br />
「石化のやつはこのワイヤーを切ればオッケィ、っと&hellip;&hellip;あれ？」<br />
レイラは素っ頓狂な声を出した。<br />
「ごめん。罠解除失敗しちゃった、んだけど～&hellip;&hellip;なんも起こってないね。どうしたんだろう」<br />
「ん？　俺も大丈夫だな&hellip;&hellip;ほんとに失敗したのか？」<br />
自分の体を見回して異常がないことを確認するカザル。<br />
他のパーティメンバーも大丈夫そうだ。<br />
「ん～、失敗した手ごたえだけはあったんだけどなぁ」<br />
「そんな手ごたえをつかむよりもっとまともな手ごたえを頼むぜー」<br />
カザルの言葉は笑みを含んでいる&hellip;&hellip;まだ。<br />
「&hellip;&hellip;あ」<br />
急にケイツが小さな声を漏らし、そしていきなり宙を見回したりなにかをぶつぶつ呟いたりしだした。<br />
「んあ？　どうしたケイツ」<br />
「あっ、あのっ、さっきのワナ、マジックドレインです」<br />
震えた声でカザルに答えるケイツ。<br />
「&hellip;&hellip;マロール、使えなくなりました」<br />
パーティメンバーにその意味が浸透するまでしばらく時間がかかった。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE37</link>
    <pubDate>Wed, 03 Jan 2007 09:38:43 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/38</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その36</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「ふぁ」<br />
翌日大きく伸びをしながら右手であくびをかみ殺し、いつものようにメンバーの中で一番遅れて待ち合わせ場所に到着したファールの前にミルーダとシガンが立った。<br />
「ほら、ミルーダ」<br />
「はい&hellip;&hellip;お姉さま、昨日はすいませんでした」<br />
シガンに促され姉に頭を下げるミルーダ。<br />
「ふにゃ&hellip;&hellip;うん&hellip;&hellip;」<br />
ファールは寝ぼけ眼で曖昧に頷いた。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">更科の里、姥捨山の月見んこと</font></strong></p>
<p><br />
「おぉ、階段発見！」<br />
奥の院に到着して何日目だろうか、パーティはようやく第4層へと向かう上り階段を発見していた。<br />
「よし、まだ余力もあることだし、覗くだけ覗きにいってみるか。ただし無理はせずに、ちょっと見て回ったらすぐに帰還するぞ」<br />
カザルの宣言にメンバーの顔がいっそう引き締まる。<br />
奥の院に到達して初めての階層移動。ダバルプス呪いの穴ですら階層移動すると強い敵が現れていたのだ。ましてや奥の院においてどれほどの悪魔が出てくることだろう。<br />
静かに緊張感を持ったままメンバーは階段を上った。</p>
<p>階段を上った先は十字路、によく似た形の部屋だった。<br />
東西南北、それぞれの先に扉がある。<br />
ただの十字路でないところは北北東、北北西、西北西、西南西、南南西、南南東、東南東、東北東の8箇所にもそれぞれ扉が設けられていたことだ。<br />
合計12箇所の扉に囲まれてメンバーは一瞬途方にくれた。<br />
「こういう手がかりがない場所はどうも苦手だな」<br />
呆れたように頭をかくカザル。<br />
「ま、逆言えばどっちからでも攻められるってことでしょ。とりあえず北いってみよう、北」<br />
レイラの言葉に軽く肩をすくめて北の扉を開けるカザル。<br />
「んあ～、なんだこりゃ」<br />
扉の先は左右に伸びる通路。その両端に右に上り階段、左に時空の裂け目があった。<br />
「まだこの階層に来たばっかで階段なんぞ上りたくねぇし&hellip;&hellip;この裂け目ってどうせあれだろ？　別の場所に行くっていう&hellip;&hellip;まだ早ぇだろ」<br />
「じゃあ別の扉開けようぜ」<br />
シガンの提案に頷き、今度は東の扉を開けたメンバー&hellip;&hellip;が&hellip;&hellip;<br />
「&hellip;&hellip;あら」<br />
意外そうな声を出すケイツ。それもそのはずで北側の扉の奥とまったく同じ構造であり、扉の先に左右への通路、その先に右の階段、左の裂け目となっていたからだ。<br />
「次に行きましょう」<br />
ミルーダが促し、メンバーは今度は西の扉を開ける。<br />
しかしそこもまったく同じ、階段と裂け目以外になにもない場所だった。<br />
再び中央部に戻り、考え込むパーティメンバー。<br />
「こりゃあ&hellip;&hellip;もしかしたら階段と裂け目で移動しまくって他の階層を探索しながら進む、っていう&hellip;&hellip;何層かで1階ってタイプなんじゃねぇだろうな、ここは」<br />
暗い迷宮の中でも鈍く光る明るい金色のヒゲを左手で撫で付けながらカザルは眉をひそめる。<br />
「まだ決まったわけじゃないですよ。私も何層かで1階ってタイプの迷宮のような気はしますけど&hellip;&hellip;あくまで気がするだけで確証はないですし」<br />
ケイツが上目遣いでカザルに言う。だが無視された。<br />
「はぅぅ」<br />
「ま、なんにせよ南側の扉が残ってるし、そっちにいってみない？」<br />
ケイツが悲しそうな声を漏らす中、レイラがドアを指さした。<br />
「そうだな。よし、南にいってみよう&hellip;&hellip;もし同じように階段と裂け目があるようなら階段を上ってみよう&hellip;&hellip;ケイツは念のために脱出用のマロールの準備を頼む」<br />
ケイツがカザルの言葉に頷き&hellip;&hellip;そして南のドアが開かれた。<br />
「あ、うわ」<br />
あまりにも予想外の光景にファールが眩暈を起こしたようにふらつく。<br />
扉の先が左右に伸びる通路、そこまでは北西東変わらない。だが北西東側はすぐに階段なり裂け目なりが確認できたのに対して南の通路は左右の通路があまりにも長く伸びている。<br />
「ん～、向こうが見えませんね、っと」<br />
ミルーダが気づいたように普段隊列の先頭にいるファールのムラマサの先端に灯かりをともす呪文を唱えた。<br />
ファールがその灯かりを通路の奥に照らしつけようとするが奥までがあまりにも遠すぎてどうなっているのか確認できない。<br />
「変化がありすぎるってのも困りもんだな」<br />
苦笑するカザル。<br />
「とりあえず右側にいってみよう。突き当りまで行きゃなんかあるだろう」<br />
カザルの号令により歩き始めるメンバー。<br />
どのくらい歩いただろうか、迷宮内において時間を示す太陽など当然のようにありはしない&hellip;&hellip;だからこそパーティメンバーにとってはあまりにも長い時間、最初と変わらない通路が奥へと延びていた。やがて&hellip;&hellip;<br />
「やっと行き止まりか」<br />
カザルの言葉どおりムラマサにともされた灯かりの向こうに扉が浮き上がる。<br />
「まだこの階層にきてから戦闘なんてしてないからな。この扉の向こうが玄室だとすりゃ、この扉を開けたら、それが初戦闘になるだろう&hellip;&hellip;まずは様子見ながら行くぞ」<br />
カザルの言葉にやや緊張感を漂わせた、しかし笑みを含んだ顔でファールが扉を蹴破るためにそっと足をかける。<br />
「レディ？」<br />
「イエー」<br />
やはり軽い表情でレイラが親指を立て、カザルも答えこそしないものの頷く。<br />
シガンも槍を、ミルーダとケイツもそれぞれ杖を構えた。<br />
「ゴゥ！」<br />
ファールが扉を蹴破った。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE36</link>
    <pubDate>Mon, 01 Jan 2007 22:03:32 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/37</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その35</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「なぁ、ミルーダ、超落ち込んでんぞ」<br />
「はぁ？」<br />
珍しく連れ立って酒場に出かけたファールはシガンの言葉に眉を跳ね上げた。<br />
「あのねぇ&hellip;&hellip;あんたがあの子に平手打ちの一発でもしてりゃ私がわざわざ嫌われ役にならんですんだんだっての」<br />
ファールは不機嫌そうにエールをあおった。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">秋のけはひたつまゝに</font></strong></p>
<p><br />
ミルーダは迷宮の中でミスを犯した。<br />
モンスターの姿を見て自失する。それによりシガンが瀕死の重症を負ったことは確かだ。</p>
<p>「&hellip;&hellip;でも生きてんだから、そんな気にすんなって」<br />
帰るなり食事もとらずにアドベンチャラーズインの部屋に閉じこもり、ドアを開けようとしないミルーダに困ったようにシガンがドアを叩く。<br />
ドアは開かない。</p>
<p>シガンがドアを叩いている。<br />
部屋の隅でミルーダは膝を抱えた。<br />
修練場で教わった冒険者としての最低限のモラルが頭に思い浮かぶ。<br />
『自分が死んだとしても仲間はその死体を担いで冒険を続けることになる。その行為に善も悪も中立も関係ない。自分が死んでそれですむと思ったら大間違いだ。1人が死ぬことによってパーティの戦力が落ちるだけでなく、それを担いで行動することによって仲間の負担も増える。だから冒険者は出来る限り死んではならない。死なないように最大限の努力をしなければならない』&hellip;&hellip;その言葉はとりもなおさず仲間の迷惑になってはならない、ということを意味する。<br />
冒険者として『仲間の迷惑にならない』ということが最低限のモラルなのだ。<br />
なのに&hellip;&hellip;<br />
ミルーダは膝を抱える腕に力を込める。</p>
<p>子供のころより姉は奔放な人間で父親に懐いていたようであったが、ミルーダは敬虔な母親に懐いていた。<br />
&hellip;&hellip;本当に懐いていたのだろうか？<br />
母親は精神的に不安定な人間であり、常に経験であれと子供たちに教え諭していた。<br />
ただ神を崇めることのみを真理と信じ、父や姉が芸術に興味を持つことを『悪魔によって堕落させられている』と嘆き、しかしそれでも『堕落させられ悪魔の尖兵となったものに弱みは見せない』と仲のいい夫婦を演じていた。<br />
だから姉が楽団についていこうとしたとき父親が辟易するほど姉の処断を求めたのは母であり&hellip;&hellip;そこに肉親の情は存在しなかった。<br />
母はミルーダを抱き毎晩のように語り掛ける。<br />
「あなたは天使なのだから、この部屋の外にいる有象無象の悪魔どもに汚されてはだめ」<br />
またミルーダが父と会話をした日の夜などは&hellip;&hellip;<br />
「お前まで悪魔の仲間になるつもりかっ！　私を1人にするつもりかっ！」<br />
とヒステリックに叫びながらミルーダを殴り、蹴りつけた。<br />
ミルーダはただ家族で仲良く暮らしたかっただけなのに、父も姉も知らないところで母にそうやって殴られ続けることだけが家族のバランスを保つ唯一の方法だった。<br />
父は母を貞淑な妻と信じ、客にそう紹介する。母は笑顔で頭を下げながら『悪魔』とさげすむのだ。<br />
ある日、姉が屋敷から脱走する。<br />
父は慌てふためき家人をやって姉を探そうとするが、見つからなかった。<br />
そしてこの日を境に&hellip;&hellip;恐らく姉がいなくなったことが契機になったのだろう母は回復した。<br />
母は悪い夢を見ていたかのように今までのことをすべて覚えていた。そして自分の夫、そして腹を痛めて産んだ実の子を悪魔と信じていたことを後悔し嘆き悲しんだ。<br />
ミルーダが母を慰めようとすると、ミルーダの目の前を星が飛んだ。<br />
星？<br />
ミルーダは一瞬自分が殴り飛ばされたことに気がつかなかった。<br />
母は倒れたミルーダに対し殴りかかる。<br />
丸くなって耐えようとする彼女に投げかけられた母の言葉をミルーダは一生忘れることはないだろう。<br />
「お前があの子が悪魔じゃないって教えてさえくれれば！　あんたは私の実の娘を悪魔じゃないって知ってたんだろう！　そして知りながら娘を蔑む私の姿を見てあざ笑っていたんだろう！　悪魔！　お前こそが悪魔だ！」<br />
ミルーダに彼女を弾劾することなど出来なかった。<br />
彼女はそれで精神に均衡をとろうとしているのだ、と気づいてしまったから。<br />
だからミルーダは父も使用人たちも知らないところで母親の虐待を受け続けることになる。<br />
春の日も。<br />
夏の日も。<br />
秋の日も。<br />
冬の日も。<br />
また巡って春の日も。<br />
しかしミルーダはもうすでに限界が近づいてきていた。<br />
母はもう夫に対し、限りなく貞淑な妻であり、母のことを知っているのは自分だけだったのだから&hellip;&hellip;だからもう自分が家を出ても大丈夫だと思った。<br />
自分がリルガミンに遊学にいきたい、と言ったとき、父はそのころには姉の件があったためずいぶんと丸くなっており簡単にそれを許し、ミルーダはリルガミンで新しい生活が始められる、はずだった。<br />
しかし遊学先の神殿に母親の手紙が届けられる。<br />
『どこへ逃げても無駄だ。悪魔め』&hellip;&hellip;ミルーダは天を仰ぎ、寄宿先を出て母親から逃げようとした。</p>
<p>そのときに目の前にあったのが冒険者修練場だった。</p>
<p>だから自分はなにかの目的があって冒険者になろうとしたんじゃない。崇高な目的なんてなにもない。<br />
ただ逃げただけ、だ&hellip;&hellip;<br />
タイロッサムにそれを見透かされたときミルーダは母親にまた殴られることを思い恐怖していた。<br />
自分は逃げているだけ&hellip;&hellip;</p>
<p>ドカン！<br />
部屋のドアが吹き飛んだ。<br />
その向こうにはシガンが槍を構えて立っている。<br />
殴られる！　殴られる！　殴られる！<br />
私が悪い子だから殴られる！<br />
身を硬くするミルーダにシガンがゆっくりと近づき&hellip;&hellip;<br />
「よし、腹減ったからメシ食いに行こうぜ」<br />
ミルーダの頬に手を添え、明るくそう言った。<br />
ミルーダはシガンを見上げる。その目から涙がこぼれた。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE35</link>
    <pubDate>Sun, 31 Dec 2006 17:26:49 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/36</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その34</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「&hellip;&hellip;ふぅん」<br />
「あ、あの&hellip;&hellip;お姉さま」<br />
薄暗い部屋の中でだらしなくひじをつきながら本のページをめくるファールにミルーダが珍しく狼狽した声を上げる。<br />
「なぁに？　言いたいことがあるんだったらとっとと言いな！」<br />
少し強い口調でミルーダをたしなめるファール。<br />
周りにいた僧侶たちがファールを一斉に睨みつけた。<br />
「&hellip;&hellip;蔵書室では静かにしてください」</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">白川のわたり、中山の麓に</font></strong></p>
<p><br />
蔵書室のある神殿から退出し、ファールはこきこきと首の骨を鳴らした。<br />
「やっぱ神殿なんて死んだり呪われたりしない限りくるとこじゃないねー」<br />
神殿からまだそう離れてもいないのに大声で言う。神殿の門に立っていた神官戦士が睨みつけるが気にしていない。ミルーダはそっちのほうにぺこぺこと頭を下げるが、姉をたしなめることはしなかった&hellip;&hellip;もう諦めているから。<br />
「でも珍しいですね、お姉さまのほうから神殿へのお誘いを受けるなんて」<br />
姉妹の実家は精霊神ニルダを祀る修道院の長の家系であり、本当であれば神殿に立ち入ったとしてもおかしくはない。<br />
だがファールは父親を激怒させた上、家を捨て歌の道に入ったため滅多なことでは神殿に立ち入ろうとはしなかった。<br />
「ま、調べたいことがあったからね。ここらへんで王宮の資料室以外では一番蔵書が充実してるのは神殿だろうし」<br />
「なるほど」<br />
ファールの言葉に頷くミルーダ。<br />
「調べ物は見つかりました？」<br />
「それなりにね。リュクルゴスっておっさんのこととか」</p>
<p>「リュクルゴス？　なんだそりゃ？」<br />
奥の院に向かう回廊でカザルは間抜けな声を出してファールを振り向いた。<br />
「ほら。昨日のライカーガスってやつ、人間として生まれて限界を超えたから悪魔になったとかなんとか言ってたじゃん？　それだけ強大な魔力を持ってた人間だったらどっかにそういう記録って残ってないかな、って調べてみたんよ」<br />
いかにも肩がこったといわんばかりに腕をぐるぐる回すファール。<br />
「その生前ってのがリュクルゴスっていう名前なのか？」<br />
「&hellip;&hellip;なるほど。リュクルゴスでしたか」<br />
初耳といわんばかりのカザルと理解した風なケイツ。<br />
「知ってんのか、ケイツ？」<br />
「そんな詳しいわけじゃないですけど&hellip;&hellip;古代の法学者で古代帝国の法制定をした、って伝説が残ってます。貧富の格差の解消や軍整備などその功績は計り知れません。哲学者としても著名な人物でしたからもしかしたら叡智を求めるあまり定命の人間ではなく悪魔となったのかもしれませんね」<br />
ケイツの解説にふぅん、と曖昧な表情で頷くパーティメンバーたち。<br />
そんな古代人の妄執に巻き込まれても困ってしまう。<br />
「ま、どっちにしろ迷惑なおっさんってことだね」<br />
ファールが適当に話をまとめた。</p>
<p>カザルが玄室のドアを蹴破ると中のモンスターたちが臨戦態勢をとった。<br />
槍を構えるその姿にミルーダが一瞬手を止める。<br />
「&hellip;&hellip;な！？」<br />
2人の&hellip;&hellip;背の羽の色こそ漆黒ではあるものの、流れるほどの金髪と美しい顔立ち。その姿こそ宗教画に描かれる『天使』そのものだったからだ。<br />
しかしそんな躊躇も天使たちが目を開けた瞬間に消し飛んだ。その瞳の色は真紅。<br />
人間が迷宮の闇にとらわれ、モンスターとなってしまうように天使たちも闇にとらわれ堕天し、悪魔となってしまうことがあるという。それが目の前にいる存在であった。<br />
玄室に入ると同時にファールとレイラが息のあった攻撃を見せ1人の堕天使を屠る。<br />
カザルもすぐさま残る1人に一太刀を浴びせ、あとはシガンが攻撃をすればいいだけであった&hellip;&hellip;<br />
ミルーダが躊躇したのはほんの一瞬。しかしシガンはそのミルーダに気をとられる。戦闘において一瞬とは恒久の長さにも等しいのだ。<br />
カザルに斬られた堕天使はシガンに襲われる前に呪文の旋律を唱える。<br />
「ぐ、がッ！？」<br />
シガンは堕天使が唱えたなんらかの魔法により石畳に突っ伏した。<br />
「あ、ラバディ！？　&hellip;&hellip;くっ！」<br />
対象の生命力の大部分を吸い取る魔法が効果を発揮するのを目の当たりにしたケイツが危険を判断し、急ぎ魔力障壁を張る。<br />
シガンはあまりの深手に動くことが出来ず&hellip;&hellip;またその光景を見てミルーダも動けずにいた。<br />
「んなぁー！　もうっ！」<br />
鋭い顔をしたファールが残る堕天使の首を刎ねるまで、その戦闘は続いた。</p>
<p>「たっからばこ～♪」<br />
さっそく堕天使の残した宝箱に取り掛かるレイラ。シガンも自分の回復魔法によって体力を回復している。<br />
ただ、ミルーダだけが立ち直れずにいた。<br />
「&hellip;&hellip;あ？」<br />
へたり込んだミルーダの前に立ったファールが有無を言わせずミルーダの頬を張った。<br />
「おい、なにすんだよ！」<br />
ミルーダをかばうように前に出るシガン。しかしファールはそれにかまわずミルーダの胸倉をつかみ強引に立たせる。<br />
「他の誰もあんたのことを叱らないから私が叱る。あんたがぼやっとシガンは死にかけたんだ。あんたもパーティの一員であることを忘れるな」<br />
ファールのあまりの静かな言葉、そしてあまりの激しい言葉にシガンすら言葉をなくす。<br />
「まぁまぁ、反省してるみたいだしそこらへんにしときなーって、これ鑑定よろしく～」<br />
箱の罠を無事解除したレイラがミルーダに長柄の武器を放りミルーダはしょげ返った表情で、それでも無意識にそれを受け取る。<br />
「ん、あ&hellip;&hellip;ガングニールスピアー、ですね」<br />
「お？　なんかかっくいい名前だな！　んじゃ俺が使うわ」<br />
重い雰囲気を払拭させるように明るく振舞うシガン。しかしミルーダは姉の視線を受け止めきれないでいた。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE34</link>
    <pubDate>Sat, 30 Dec 2006 18:45:29 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/35</guid>
  </item>
    <item>
    <title>Wizardry外伝1　受難の女王　その33</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>目の前に小人&hellip;&hellip;背に蝶に似た羽を生やした掌ほどの大きさの生き物、フェアリー族なのであろうが闇に落ちた存在、エルマナヤンが震えていた。<br />
「ふふふ、もう逃げられんからねー」<br />
ファールの言葉に首を横に振って退路を探そうとするエルマナヤン。<br />
「これから拷問して、この迷宮のダンジョンマスターを聞きだしまーす！」<br />
「ごっ、拷問&hellip;&hellip;？」<br />
ファールの宣言になぜかケイツが怯えたような声を出した。</p>
<p><br />
<strong><font color="#ff0000">らくの貞室、須磨のうらの月見にゆきて</font></strong></p>
<p><br />
目の前にぐったりとしたエルマナヤン。ヒモで体の自由を奪ったうえでファールがとった行動は&hellip;&hellip;<br />
「へっ&hellip;&hellip;へっ&hellip;&hellip;へっくち」<br />
「ふふふ、今、そうとう恥ずかしい顔してるよぉ」<br />
紙でこよりを作って鼻をこちょこちょとしていた。<br />
「これは酷いな」<br />
「&hellip;&hellip;拷問じゃないけどな」<br />
感想を言うシガンとカザル。<br />
荒い息をつくエルマナヤンとなぜか嬉しそうなファール。<br />
「ふえぇ&hellip;&hellip;ふえぇ&hellip;&hellip;」<br />
泣きそうな顔でやたらとエルマナヤンに共感しているケイツ。しかし誰も気にしていない。くしゃみを出しそうな顔になって鼻を押さえている。<br />
「これがお姉さま流の拷問ですか」<br />
「&hellip;&hellip;ん？」<br />
ミルーダの呟きにレイラが顔を向けた。<br />
「バル～。なんか妹さんがもっとちゃんと拷問しろってー」<br />
「なっ！？　言ってません！」<br />
ミルーダが反論しようとするがもう遅い。<br />
「んじゃあアイテムその2を用意しよう。あと私はファールだ」<br />
嬉しそうに道具袋の中をごそごそと漁り&hellip;&hellip;<br />
「じゃんっ♪」<br />
ネコジャラシを取り出した。<br />
「なんであんなもん持ってきてんだ」<br />
「すごい準備がいいなぁ」<br />
シガンとカザルが感心したように呟く。<br />
「今度はこれで背中を&hellip;&hellip;ふふふ」<br />
ファールの笑いに怯えた顔をするエルマナヤン。<br />
「方向性は変わらないんですね&hellip;&hellip;ちょっと安心しました」<br />
安心したといいながら呆れたようなミルーダ。<br />
「う、やべぇ&hellip;&hellip;ちょっと変な気分になっちまった」<br />
エルマナヤンの怯える顔に股間を抑えながら前かがみになるシガン。<br />
「うるっせぇ」<br />
その後頭部にかかとを叩きつけ、黙らせるレイラ。<br />
「う～ん、でもくすぐりって結構耐えられないんですよね」<br />
「確かにその通り。耐えるのはかなり難しいね」<br />
ケイツの呟きに答える男の声。<br />
「そうなんですよね。私も&hellip;&hellip;って誰ぇっ！？」<br />
ケイツの大声に振り向き、臨戦態勢になるパーティメンバー。ケイツの言葉に頷いたのはローブを纏ったドクロだった。<br />
「あ&hellip;&hellip;あ&hellip;&hellip;言ってません。まだ言ってませんでした！」<br />
ファールの左手の中で青い顔をして叫ぶエルマナヤン。ファールはそれを不思議そうな顔で見ながら、しかし片手で腰のムラマサを抜く。<br />
「でも言いそうだったじゃないかい。危ない危ない&hellip;&hellip;そんな簡単に秘密を漏らしそうになる子はお仕置きだ」<br />
ドクロが言いながらエルマナヤンを指さす。<br />
「あっ！　つっ！？」<br />
ファールの手が燃えた。いや、ファールの左手の中のエルマナヤンが炎を発したのだ。<br />
思わず手をエルマナヤンから離すファール。その手は重度の火傷を負い、そして手から離れたエルマナヤンはすでに絶命していた。<br />
「てめぇ！」<br />
先手必勝とばかりに斬りかかるカザル。しかし&hellip;&hellip;<br />
「あぁ、怖い怖い」<br />
その斬撃はドクロの元には届かない。余裕を持って斬撃を避け、せせら笑うドクロ。<br />
「ライカーガス」<br />
ケイツが小さな声で呟いた。<br />
「知ってるのか？」<br />
「昔、師匠の書物でその名前を見たことがあります。バンパイアロードに並ぶ不死の王、と」<br />
剣を避けられたことで、ドクロの追撃を嫌い元の位置に戻りながら問い返すカザルに、ケイツはやはり小さな声で答える。<br />
バンパイアロード。<br />
ワードナの迷宮で、常にワードナの側にあったという美貌の不死王。不死者の都ファールヴァルトの最後の王。その魔力はかつて1000年以上前の『最初の危機』においてエルフやドワーフの王族たちが悪魔王マイルフィックを倒す際に力を借りたほどだという。<br />
それに並ぶ不死の王とは&hellip;&hellip;<br />
「なるほど、博識なお嬢さんだ」<br />
ケイツの言葉に満足するように恭しく一礼して見せるライカーガス。<br />
「ただ私と彼の者を同列に並べることはないよ。あのものはまごうことなき不死の王。私も元は人間で、今はこのような姿になっているものの不死者ではない。私は&hellip;&hellip;そう、わかりやすく言えば人間として生まれ悪魔になったものと考えてくれればそれでかまわない」<br />
「&hellip;&hellip;人間として生まれた悪魔、だと？」<br />
呆然と問い返すカザル。<br />
「そうとも。人間として限界を超えるほどの魔力を有していればそれも可能なのだよ」<br />
メンバーの脳裏にダバルプスの話が浮かぶ。あれも確かあまりにも強すぎた魔力を持つ人間だった。<br />
「ということはお前らを召還したやつは悪魔になろうとしてるのか？」<br />
「彼女には彼女の理想があるさ。今のところ悪魔になろうと考えてはいないようだけどね&hellip;&hellip;まったく惜しいことさ、あれだけの魔力ならかなり高位の悪魔になれるものを&hellip;&hellip;まぁ、話はここまでにしよう。私たちは第1層で待っている。早く来ることだね」<br />
ライカーガスはそれだけ言い終え&hellip;&hellip;恐らくなんらかの呪文を行使したのだろう、宙に掻き消えた。<br />
「やっぱ彼女ってなぁ&hellip;&hellip;『彼女』なのかぁ」<br />
カザルが額を押さえ嘆息する。</p>]]>
    </description>
    <category>Wizardry小説</category>
    <link>http://team2004.blog.shinobi.jp/wizardry%E5%B0%8F%E8%AA%AC/wizardry%E5%A4%96%E4%BC%9D1%E3%80%80%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE33</link>
    <pubDate>Fri, 29 Dec 2006 15:44:24 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">team2004.blog.shinobi.jp://entry/34</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>